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水崎秋詩集「  」

30
詩だけをまとめました。 大切な言葉が詰まっています。
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記事一覧

詩「おおかみ」

詩「おおかみ」

コップいっぱいあふれた水を
フローリングにぶちまける

ため息ひとつ、慌ててタオル
一滴残らず拭き取った

バケツいっぱいあふれた水を
大草原にぶちまける

晴れた感情、伸びひとつ
瑞々しさを取り戻す

何を気にしていのちを燃やす?
自分の世界を研ぎ澄ます?
他者を活かして生き延びる?

大きな宇宙の小さな美学

早朝5時のサイレンが
「こうあるべき」を消し飛ばす

大地を讃美する声色が
「どうで

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詩「フロムユートピア」

詩「フロムユートピア」

ユートピアからやってきた

吟遊詩人のお出ましさ

とんがり帽子は折れている

心の代わりに折れてんだ

あなたと一緒に沈んであげる

優しい男さ、皆そう言う

沈んだ先で冷たくなって

残された花は拾ってゆくよ

煙草のけむりで隠せばいい

浅い呼吸と宝物

だからなんだと知らん顔

ユートピアからやってきた

吟遊詩人の夜のうた

緑のマントは擦り切れた

あなたの代わりに擦り切れた

あなた

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詩「遠雷」

詩「遠雷」

灰色の心臓に赤い血を巡らせた

なんてことは妄想で

想像したら不可解で

ため息ひとつ飲み込めず

僕らは無力と言葉にできない

ひとりのカオスが見つかった

心の場所を探ろうと視線を右上に動かした

未だに知性は蒙昧で

幼稚な私が悲しくて

冷えた指先も動かせず

僕らは何も成し遂げられない

ひとりのカオスを見送った

歩くだけなんだ、あくまでも

遠くで光るなにかの麓に

向かおうなんて

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詩「朱夏」

詩「朱夏」

旋回する信念の翼を
嘲笑うジャイロスコープ

回転に内包された虚無と無限に
ポルードニツァは涙を浮かべた

百獣の王は波打ち際で沈黙して
飛魚の残影に進むべき道を見た

平面に奥行きを見ることは
天賦の才と知るがいい

突き刺した理念の旗を
薙ぎ払うサイクロトロン

九番目の戦線には薔薇色の血が流れ
赤茶色の草原に碧い火が灯った

視界を覆い尽くす妄念は
透明なエネルギーだと誰かが言った

色のつ

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詩「吠える」

詩「吠える」

吠える
目の前の地面に向かって

涙は頬を伝わない
落ちた水滴を舐めとって

反響する怒号を聴く
肉とも骨とも乖離して

上を向いて歩かない
踏み締める大地だけを睨んで

闊歩闊歩と進むのみ
食いしばった歯は削られて

復讐の鐘は鳴り響く
救われるんだ
救われるんだ

まどろみを破る喇叭と流星
泥の中に咲く一輪を

散らせましょう、その旅路の結末で
笑いましょう、捨て去った最果てで

詩「クラレッタ」

詩「クラレッタ」

無限遠点の先の海
君には見えない真理の光
私はずっと見据えて進む
夢想旅人の反逆路

千年前の光源辿る
見上げるだけの星間旅行
一歩も動かず心を届ける
宇宙と私の漸近線

ああ、クラレッタ
ああ、クラレッタ

貴女を目指す一歩目を
私は笑いはしないだろう

二歩目を踏めば戻れない
逃げない証左を示すだろう

運命を決める三歩目に
込める力は揺るぎなく

生死の狭間の四歩目を
誇りと呼べば憂いなく

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詩「ガーデン」

詩「ガーデン」

さらさらなびく愛の跡
ひなたにそよぐ夢の島
秒針だけが走り去り
不可逆の今が残された

隣り合わせのハイドとシーク
ほらほらごらん「まぁだだよ」

回転木馬とブリキの人形
錆びた指先を握るだけ
必ず戻ると言ったきり
逆さまの城で待たされた

ガーデンハウスのパズルのピース
ほらほら逃げろ「まぁだだよ」

噴水からは静寂だけ
おもちゃ箱とノスタルジー
あの日の温もりは戻らない
あの日の苛立ちは戻らな

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詩「ナイフ」

詩「ナイフ」

ナイフと色褪せない天球儀
砂をふりかけた群青を横切る金属の彗星

渓流に立つ悍ましい物の怪
穏やかな足元だけを見て静かに後ずさる

朝焼けに混在するモノクロ
美しいを濁すのはいつだって夜明けの鐘

シンクロとは非科学的終末
通じ合った時こそ終わりを予感する悪癖

終幕を知らされないピエロ
泣きじゃくる少年には張りついた笑顔を

迷路と故郷に遺された名前
戻れないのならここで産声をあげようか

逆手

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詩「虚構潜水」

詩「虚構潜水」

夢に見た姿になってみた
中身を詰めたら出来上がり
伽藍堂にも劣る醜態
前を向いても向いただけ

火花を起こしても火を起こせない
くしゃくしゃピースは湿気たまま

困難苦難ゆらりと飛び越え
降り立つ先は処刑台

掃いて捨てるよ現在を
土台がなければ立てはしない
砂上の楼閣と笑われて
踏みつけてしまったこれまでを

走り出しても走り続けられない
ごちゃごちゃ文句は浮いたまま

艱難辛苦さらりと飛び越え

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詩「夢見鳥」

詩「夢見鳥」

誰かの心を動かしたいと
名乗りを上げた僕だよな
幼い心ってなんだっけ
幼いことを許す自分だよな

感情たちの群れの中で両足で立ってみた
うずくまっていたら見えない景色を確かめたくて

いつかはなれるのかな
大きな奔流の真ん中に
ここでいいんだと座り込んだ
プライドなんか明日にはガラクタなんだ

いつかは必要とされたいと
あたりを見回した僕だよな
強いと思われたかったっけ
関係ないって武装したよな

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詩「観測者」

詩「観測者」

涙を流す機能を持った
機械仕掛けの観測者

熱と光と細めた双眸
答えは最後にとっておく

戦い続けた星だけが
宿す閃きがあるんだろう

交わることはないんだよ
ここに心を置いていこう
置いた心が朽ちようと
確かな事実だけを携えよう

泥の中を歩いていった
脈動している観測者

風と終わりと静まる遠点
じっと夜明けを待っている

歌い続けた声だけが
届く地平があるんだろう

たくさん抱えてきたんだよ

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詩「狂犬」

詩「狂犬」

貴女が好きですと
言ったことは一度もない

貴女といたいですと
言ったことは一度もない

それでも僕は吠えていた
貴女が好きだと吠えていた

そばにいられないと知っていた
いてはならないと知っていた

暗い底から這い出した
白い陽を浴びる貴女には
私は必要ないのです

未来が光に満ちている
自由を手にした貴女には
私は必要ないのです

私は貴女を忘れません
貴女が私を忘れても

雑踏に消える私の背

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詩「毒を食む」

詩「毒を食む」

毒を食む
右手に林檎、左手に空洞
舐めとった甘毒に貴女は小さく頷いた

貴女の黒髪は白く乾いてしまった
貴女の柔肌は黒く褪せてしまった
貴女の生命は儚く凪いでしまった

墓を立てよう
見晴らしなんてどうでもいい
墓を立てよう
空の高さなんてどうでもいい

そんな貴女の墓を立てよう
皮肉に満ちた墓を立てよう

エルサレム
聖地は遠く、光は見えない
飽き飽きする孤独に僕は小さく身悶えた

墓を立てよう

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詩「天寿全う主義」

詩「天寿全う主義」

長生きしたい
長生きしたい
あれもしたいこれもしたい
あれが欲しいこれも欲しい

したいことは絶え間なく
生きたい意志は淀みなく
醜く映った瞳にも
仲良くしようと微笑んだ

長生きしたい
長生きしたい
あれもしたいこれもしたい
あれが欲しいこれも欲しい

後悔先に立たずと誰かが言った
思い立ったら吉日と僕は叫んだ
意欲物欲強欲よくよく
自分勝手は才能だ

長生きしたい
長生きしたい

まだまだ生き

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