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シンプルだからこそ、大切なこと。人と組織を育てる"承認"の力

先日、朝4時に起きて、6時から倫理法人会で講演をしてきた。

倫理法人会とは、「企業に倫理を、職場に心を、家庭に愛を」をスローガンに、全国7万社の会員企業が「倫理経営」を学び、実践するための活動に取り組む団体だ。

この会の運営の方と縁があり、登壇を依頼いただき講演に至ったのだ。当日は、朝6時という早い時間にもかかわらず、約20名の方が参加してくれていた。7割ほどが経営者だったが、経営者ではない一般の方も参加されていたし、年齢も30代から60代まで、属性はさまざまだった。

この場で僕が話したことの主題は、「管理職の責務」だ。今回は、このテーマに対する僕の考えをこのnoteでも言葉にしておきたい。


“承認”が生み出す組織の好循環

僕は、管理職の最も重要な責務は「職員たちの働きやすい環境づくり」だと考えている。そしてこの実現のためには、2つの要素が重要だ。

1つ目は「心理的安全性の高い環境を作ること」。心理的安全性が高い環境とは、職員が自分の意見や提案を否定されることなく、安心して発言できる職場のことだ。どんな発言をしても、上司はもちろん、同僚や後輩、部下からも否定されない状態、それこそが心理的に安全な環境である。管理職は、この環境を作り、かつ維持し続けなければならない。

2つ目は「課題発見及び解決能力を持っていること」。管理職の役割は、職場で起きたトラブルや課題を解決することにある。もし現場でトラブルがまったく起こらないのであれば、管理職は必要ないのではないかと思うくらい、根幹となる管理職の存在意義だ。

しかし実際には、組織ではさまざまな課題・問題が発生する。それらが深刻なものとなる前に、トラブルの芽を見つけること、そして解決に導く能力が非常に重要だと僕は考える。

では一体、どうすればこの2つを実現できるのだろうか。

その鍵を握るのが「承認力」だ。承認力は、大きく以下の4つに分けられる。

存在の承認:その人がそこにいることを認める
(名前を呼んで挨拶をするなど)
感情の承認:その人の気持ちを理解し認める
(「そんなふうに思ってくれてありがとう」といった声掛けなど)
行動の承認:その人の行動を認める
(結果にかかわらず行動してくれたことに感謝するなど)
結果の承認:その人が出した結果を認める
(こんな結果を出してくれてありがとうといった声掛け)

この4つの承認を日々実践していけば、職員たちが次第に安心して、些細なことでも報告や意見を伝えてくれるようになる。そうすると、現場の細かい状況がより解像度高く理解できる。そして、課題をまだ小さいうちに発見でき、早期解決へとつながるのだ。

つまり承認力は、まず職場の心理的安全性を高める。そしてその心理的安全性の高い環境が課題の早期発見・解決を促進する、という好循環を生み出すことができるのだ。

要するに、管理職の役割は単なる業務管理ではない。職員一人ひとりの存在や感情を認め、その人らしさを活かせる環境をつくることこそが、本質的な役割であり、果たすべき責務だと言える。

こうした管理職に対する考えのほか、講演では僕自身の経験も包み隠さず話した。債務超過から這い上がってきた経験や、具体的な数字を交えた会社の利益。さらに、妻との関係性についても率直に話をした。

オフラインの、その場限りだからこそ話せる内容だったようにも思う。深い話ができたこともあってか、参加者の方からも「家族や友人関係にも通じる必要な話を聞けてよかった」と言ってもらえて、とてもうれしかった。


ニコニコしながら手放していく

この講演は、僕にとって、これまでの経営と妻との歩みを改めて振り返る機会になった。そして、1年後の自分の姿を考えるきっかけにもなった。1年後も僕は同じことをしているのか、もしかすると今の場所から少し離れているのかもしれない。そんなことを、少し俯瞰的に考えることが増えた。

また、今僕がしている決断は、リンクスという会社のための決断なのか、與那城将という一人の人間としての決断なのか。そう考えることもある。

そんな時に、日本資本主義の父と言われる渋沢栄一の孫であり、自身も経営者として活躍した、渋沢敬三氏の「ニコニコしながら没落していけばいい」という言葉を思い出した。

『落ちていくことが悪でもないし、登っていくことが善でもない』

「ニコ没」と言われるこの考え方は最近、成田悠輔氏が専門学校の卒業式のスピーチで語ったことでも知られている。
https://youtu.be/bbQX89lVkj4?si=PYYlYgSeZjnJBVDr

今まで積み上げてきたものを維持して、さらにそれを超えていくことも大切だが、反対にニコニコしながら自分が積み上げてきたものを潰していく。

これまで僕は、「積み上げる」ことを考えてきた。新しい施設をオープンし、職員を育て、仕組みを作る。でも、やってきたことに固執するのではなく、時には「手放す」ことも必要で、今、その時期なのかもしれない。そう感じている。


シンプルに生きるとは

なんとなく、ここ半月くらいで自分が変わってきている気がする。それは、前回のnoteで、僕が今考えていることを改めて言語化できたからかもしれない。

僕の大切にしている「赦す」ことについても触れている。「赦す」とはとても難しいことだが、同時に人生を送る上では欠かせない、尊い営みでもある。人を赦せることはとてもうれしいことだと考えているので、この機会に言葉にできてよかった。

一方で最近、ある写真との出会いから、言葉以外の表現にも興味を持つようになった。東京都現代美術館で行われている展示「坂本龍一 | 音を視る 時を聴く」で撮影された写真だ。このnoteの編集をお願いしているサオリス・ユーフラテスさんがSNSに投稿していたものを見て、なぜかビビッときたのだ。

白いもやの中にいる人々と、それを上からみている人々。僕はこの写真を見て、その構図に様々な解釈ができると感じた。中にいる人には見えないものが、上から見ている人には見える。まるで自分のやるべきことをわかっている人が上にいて、それを見つけられずに迷っている人がもやの中にいるみたいだ。

この写真をきっかけに妻と対話を行うなかで、「承認」「赦す」といった僕の大切にしていることも、絵や写真のようにより視覚的に表現できるのかもしれないと感じた。これからは、言葉以外の表現にも挑戦してみたい。

今回は、講演で話したことを軸に、僕の考えを言葉にした。こうして改めて言葉にしてみると、取り立てて突飛なことや特別なことはしていない。

承認すること。感謝を伝えること。対話すること。

僕のしていることはとてもシンプルだ。シンプルだからこそ難しいのかもしれない。

これから人間のやっていくことはどんどんシンプルになっていくのではないか。なぜなら、複雑なことはAIがやってくれるからだ。だからこそ、人間にしかできない「承認」や「心理的安全性の構築」がより重要になってくるだろう。

とはいえ、将来はどうなるかわからない。だからこそ、計画を立てながらも、時には、積み上げてきたものを手放す勇気を持つなど柔軟に対応していくことが、より一層求められるようになっていくのではないだろうか。

僕も、柔軟であり続けたい。そのためにも、複雑で余計なものを抱えすぎず、シンプルに生きていきたい。


▼僕の自己紹介noteです。興味をお持ちいただいた方は、読んでいただけるとうれしいです。

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                       書き手 えなりかんな
                 聞き手・編集 サオリス・ユーフラテス


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