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刺身の仕事

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大前提として



大前提として刺身の仕事は、素材の良さをいかに生かすかに集約されます。

1本の魚から、きちんと水洗いをして安全にしかも素材の旨味・味わいを遜色のない状態で食べられる一切れにまで造り込む。

その過程においては迅速に正確に、しかも美しく衛生的な仕事を発揮しなくてはいけません。

大きな使命

そして最終的な大きな使命、刺身を造ると言う事は旨い切り身を造る技術であり、刺身はその完成品です。

目を読み、素材の適性を理解し、食べやすく・・しかも最も味わいを感じる切り身を造るのは、たった一切れの切り身を切り出すだけでも膨大なノウハウが詰まっています。

ただ単に魚を卸して切れば刺身になる・・と言う物では、決してないのです。

一歩ずつ、コツコツと積み上げる様に、勉強に勉強を重ねて、ようやく一切れの刺身が出来る訳です。

そして最近の巷に溢れる刺身の仕事では、この感覚が薄れています。

大きな切り身が贅沢とか、厚い切り身が高価な刺身とか、実は刺身の価値と関係ありません。

素材の締まり具合、弾力、噛み切る時の抵抗と味わいの種別によって旨い切り身が、おのずと決まってきます。

例えば、活け蛸を半生で茹でて刺身にする時、噛み切らなければ食べられないほどの大きさにしたら、その時点で味わいは半減します。

噛み切る事に集中してしまい、味わいを楽しむゆとりが消えてしまうのです。

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こういう素材の時は、一切れで口の中に入る大きさに切り付けるのは絶対条件で、さらに表と裏に細かな切れ目を入れて噛み切りやすくする、味わいを感じやすくするという工夫が必要です。

このひと手間だけで、蛸の味わいは何倍にも膨らみます。

この一点だけを考えれば、実に小さな工夫です。

でも、小さな工夫の積み重ねの上に「美味」が生まれる。

旨い切り身を造る

「旨い切り身を造る」という目的なくして、単に蛸の刺身に包丁目を入れただけでは、ただの技術自慢、自己満足の仕事となります。

刺身を造る・・・一言で言いますが、その一言の裏には長い・長い年月にも渡った多くの先人たちの工夫の結晶が散りばめられています。

そして多くの店の傾向として、大きな切り身を良しとしている部分が多々あります。

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刺身の価値

しかしながら刺身の価値は、切り身の大きさではありません。

ひと口で食べて、いかに集中して味わいを感じられるかを真剣に考えた一品。

食べやすく、しかも素材の味わいを十二分に高められるかに心血を注いだ一品です。

何処かで刺身を味わうなら、またご自分で刺身を造る機会があれば、ぜひともそんな所にも心を配り食べて、造ってみてください。

刺身の楽しみ方が変わり、刺身の楽しんでもらい方が変わると思います。

では、今日も良い一日をお過ごし下さい。


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