【短歌】夢ならば覚めて 飛び起きちゃうほどに悪い夢ではないのだけれど
それでも覚めなければいけない、夢は夢だから。
目を覚まして布団から起き上がる、という夢を見てたよウケる、と思う夢を見た、という夢を見た……という超多重構造の夢を見た。
電話が鳴ったので慌てて取った。寝起きのがさついた声で必死に返事をしていた。受話器の向こうではバイト先の雇用主がこんな時間まで寝ている私の愚かさや、いかに他のバイトと比べ私が劣った人間であるかという話を具体的なデータを交えて懇切丁寧に説いていた。
その説明を聞いている間も電話の音は鳴り止まなかった。電話は夢の外で鳴っていた。私はこの期に及んで夢の中にいた。
気づいたらスマホには留守電が入っており、今度こそ現実だよな、と足元を確かめる気持ちでコールバックの文字をタップする。電話は苦手だけど、夢の中ほど悪いことにはなるまい。