女の呪文を唱えたら。
「ウイスキー、ウイスキー、ウイスキィーー!」
朝、鏡の前に立つ。
無理やり口角を上げて、
笑顔の呪文を唱える。
OLは、
つくり笑顔で、お金を稼いでいるらしい。
…両手を頬に当てて、持ち上げる。
そして、目を細める。
「にーーーー!」
…うわぁ、、ブス笑、、
自分の顔面クオリティに、あきれて、笑った。
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すごですぅー!♡
すぅいませぇーん♡
ありがとぉございまぁす♡
…ミナミちゃん(職場の後輩・23歳)は、すごい。
栗色の髪と、猫のような人懐っこさ。
さりげないボディタッチと、耳をくすぐる声。
そして、
……笑顔がめちゃめちゃ可愛い。
私もあんな風な、
愛され女子になりたかったわ。
そう心で呟きながら、
淡々と仕事をこなす。
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黒髪メガネより、
茶髪コンタクト。
無地Tシャツよりも、
淡い水色のワンピース。
作り笑顔より、
….生まれつきの愛想。
…そう、
生まれつきの愛想が欲しかった。
つくり笑顔じゃ、だめなんだ。
つくっている時点で、負けていた。
気付いて良かった。
明日から、
鏡の前で呪文を唱えるのは、やめよう。