…先生、ずるい。
…僕は、先生が好きだ。
朝。
先生は必ず、生徒玄関にいる。
そして生徒達に、
「おはよう」を言うのだ。
あたたかい笑顔と、優しい声。
ブラウンの透き通った、瞳。
ハーフアップにしている、柔らかい髪。
毎日、先生に、
「〇〇くん、おはよう!」
と、言われるだけで、
……僕は、、耳の奥まで熱くなる。
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僕は、中途半端だ。
そして暗い。
成績が、良くも悪くもない。
運動神経が、すごく良いわけでもない。
悪い不良でもない。
家庭環境が、特別悪いわけでもない。
…何もかも中途半端で、パッとしない。
そんな目立たない僕なんかにも、
先生は、
……いつも優しくしてくれた。
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放課後。廊下。
「〇〇くん、、顔色悪いよ……大丈夫?」
先生が、優しく声を掛けてくれた。
……嬉しかった。
しかし、それどころではなかった。
実は朝から、頭痛がひどかったのだ。
< …あっ、はい。……大丈夫です……
返事をした後、
突然、
視界がグニャりと、歪んだ。
世界が反転し、黒くなった。
そして、
…意識を失った。
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……ん…
「〇〇くん! ! …良かったぁ……。」
目を開けると、保健室にいた。
そして、
視界いっぱいに、
先生の優しい顔があった。
……この状況。
頭は、まだ割れるように痛いが、
…先生を独り占めしている。
不幸中の幸いとは、こういうことか。
頭が痛いついでに、、聞いてみた。
< 先生って、、
…好きな人とか、いるんですか…?
「ふふっ、何それー笑
〇〇くんってそんなこと聞くんだー。」
「あぁっ!!
もしかして、好きな人できたんでしょー!
3組の〇〇ちゃんとか、可愛いよね。」
…ずるい。
先生は、僕の気持ちを知っている。
その上で、ああいう風に言ったのだろう。
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先生は、
いつも優しくしてくれる。
けれど、
……先生はずるい生き物だ。