ルシールの涙 【詩】
ルシール
はじまらない夜明け
黒い輪郭
ルシール
微弱な電流
冷たい線の火花
アイガスベテ
（と いってみる）
隣の部屋から
イキモノの気配
眠れずにいる丘の
藍色の起伏
繊毛の揺らぎは冷えて
血の中の都市は燃えていて
惑星のひび割れから
白くなって剥がれ落ちていく
薄い 鳥たちの羽毛 とても薄い
こわばった獣のこころを
レモネードにとかす
金星はすぐそこに
アイガスベテ
（と いってみる）
星々の軌跡を
思い巡らすルシールの
暗い迷路に手を伸ばしていくと
どっちつかずの右脚
左手首 頸椎 イボ
やがて折れ曲がっていく冷たい静脈
（アイナキセカイ）
と呟いてみる
ルシールの 流す涙は
黒い線になる
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