気持ちが落ち込んでいる人の話を聴く時の「同質の原理」
今回は、気持ちが落ち込んでいる人の話の聴き方に関する話です。
心理相談をしていると、気持ちが沈んでいる、暗い気持ちになっている方の話を聴くことが多いわけです。
その時に励ます、あるいは明るい方向に話を持っていこうとしても効果がありません。
相手と同じテンションで話をすることがまずは大事です。
このことは、音楽療法の理論の「同質の原理」と似通っていると思います。
この原理を参考に気分が落ち込んでいる人の話の聴き方についてお話します。
日常場面でも落ち込んでいる人と話す時に対応に困ることはないでしょうか?
少しでもお役に立てればと思います。
「同質の原理」とは、アメリカの精神科医アルト・シューラーが提唱した音楽療法の理論です。
自分の気持ちに合った音楽を聴いて、自分の気持ちを代弁してもらうというもの。
悲しい気持ちの時に悲しい曲を聴いていると、曲が自分の気持ちを代弁しているようで癒えたという経験はありませんか?
音楽に共感してもらえたような。
気持ちが落ち込んでいる時は落ち着いた音楽、高揚している時は高揚した音楽を聴くほうが良いというのです。
気分が落ち込んでいる、またはやる気がない時には無理矢理に元気な曲を聴かない。
静かで暗い落ち着いた曲を聴き、徐々に元気な曲へ移していくほうが効果的ということです。
多動傾向がある子どもが動き回っている時、落ち着かせようとして落ち着いた曲を流しても効果がなく、最初はテンポの速い曲を流して徐々にテンポを落としていくほうが効果的とのことです。
相手の話を聴く時の対応の仕方もこの「同質の原理」と似ています。
私も心理相談をしていると、気持ちが落ち込んでいる相談者と話をすることがよくあります。
それこそ、「死にたいです」と話されることも。
そのような時には無理に励ましたり、気持ちを持ち上げたりはしません。
自分のテンションを相手のそれに合わせて話を聴き、話します。
そして、徐々に相手の気持ちに区切りがついて前向きになり始めたら、それに合わせて自分のテンションを上げていきます。
同質になる時に相手の気持ちに同意して自分の中に受け入れようとすると苦しくなります。
よく言われることですが、「同意」と「理解」を分けるのです。
「同意」は相手の意見に同意して自分の中に入れるようなイメージ。
「理解」は相手の意見をそのままにして受け止めるというイメージ。
自分が苦しくならないように「同意」ではなく「理解」しようとすると、話を聴くことができます。
そして、話を聴いて理解してもらえたと感じると、話し手の気持ちに区切りがついて前向きになり始めます。
心理臨床に限らず、日常で落ち込んでいる人と話す際に参考になれば幸いです。
今回は、気持ちが落ち込んでいる人の話を聴く時の「同質の原理」についてでした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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小林いさむ|公認心理師