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情景 -1958年-
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一九五八年二月十一日. 二十七歳の誕生日に.
空はただの蒼さだった。窓をあけ、朝の冷やかな空氣を入れ、田園の曲を聽きながら、こゝでやっとキルケゴールが讀めるまでになった と思い、書架に三年前から、ちりをあびていた選集をとり出して、瞬間と書かれた表紙をつくゞくと眺めた。私は幸福だった。
一九五八年二月十一日. 二十七歳の誕生日に.
空はただの蒼さだった。窓をあけ、朝の冷やかな空氣を入れ、田園の曲を聽きながら、こゝでやっとキルケゴールが讀めるまでになった と思い、書架に三年前から、ちりをあびていた選集をとり出して、瞬間と書かれた表紙をつくゞくと眺めた。私は幸福だった。