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柚木麻子著の「とりあえずお湯わかせ」はネットの悪い所を詰め込んだエッセイ


コロナ禍とフェミニストと子育てと

何か久々に読んだ本の感想を書きたくなったので書きます。
まず、柚木麻子さんについてですが多分殆ど読んだことありません。
ランチのアッコちゃんを読んだような気もするけど…みたいな情報量です。
配信とかテレビとか流し見で読むには、エッセイが丁度いいなと最近気がついたので、書店で探していたところ面白そうだったので読みました。

ですが、思ったより思想に溢れた、めっちゃ共感できないツイッターで見るフェミニストや政治批判の見ていられない要素を詰め込んだ悲しいエッセイでした。

一体誰が悪いのか

コロナ禍前に始まったエッセイなので、そもそもコロナを題材にしたエッセイを書くつもりはなかったのだろう。
だからかわからないが、序盤から後半にかけてだんだんと悲壮感や、やるせなさが漂ってくる。

作者の柚木麻子は呼吸器関係の疾患をもっているそうで、コロナでかなり精神的にやられていたようだ。
それに加え子育てもしており、睡眠不足やホルモンバランス等の変化も重なって、コロナ禍のストレスは多大なものだったと考えられる。
それでも、創意工夫をしながらステイホームを楽しむ(?)姿は悲壮感を感じさせない、いきいきとしたエッセイだった。
居酒屋に行けないので、子どもと居酒屋さんごっこをしたり、ガチのモミの木を買ってきてクリスマスツリーを作る話は微笑ましかった(そのモミの木が2ヶ月放置されたのもめっちゃいい)。

そんな感じで、思想が全面に出ていない時の話はめっちゃ楽しいが、コロナ禍の政府批判やジェンダー論の話が主になる後半は、正直読んでいられなかった。

経済優先の政府だったか…?

コロナ禍の話題になると、政府批判が始まる。
柚木麻子は繰り返し、
「経済活動優先の政府」「過剰な自己責任論が飛び交う」
など書いてあった。
そもそも、私の認識の世間の声はむしろ、
もっと経済活動を優先させろ
だった気がする(特にコロナ禍後半は)。

小説家という職業柄、ある程度自宅にて仕事は完結できるだろう。
エッセイには、取材に行けないことや、カフェやその他場所で執筆ができない、など書かれていた。
どの職業にも外出できないという枷は付くと思うが、小説家に関してはその枷は割と軽いのでは無いかと思う。

そもそも経済活動をしないと、ご飯は食べられない。
お金が無いと衣食住できないのは、当たり前のことだと思うのだけれども、と思ってしまう。

特に飲食店何かは悲惨な状況で、私が気に入っていた店が何件も潰れてしまった。

こういった全体感の無さというのは、随所に見られた。

天使と悪魔とインターネット

また当時スマホ中毒と自身で言っていたが、SNSやyoutubeなどを本当にずっと見ていたそうだ。
思い返して見ると、そういった批判の数々はネットの海に散らばっていた。

自分の都合の良い意見、その都合の良い意見を強固にする意見など、自分の頭で考えなくてもいくらでも出てくる。
俗に言うエコーチェンバーみたいなことは、非常に起こりやすい状況だったと思う。

マジで地獄の様相と化していたインターネットで、
ファクトチェックの必要性はより顕著になったと思う。
都合の良い意見は天使でもあり、悪魔でもある。
それをいくらでも収集できて、いくらでも時間を潰せるインターネットはマジで悪魔のツール。
しかし、リモート化が進んだことことは不幸中の幸いだっただろう。
Zoom飲み会で救われた人たちがどれだけいただろうか…。

未知のウイルスによる疲弊

著者自身も疲弊し、未知のウイルスという目に見えない恐怖と戦うには、相当のストレスがあったと思う。
怒りのやり場に困り、救いの意見にすがるのは致し方ないことだろう。

政府は間違ったことをたくさんしてきたが、正しいこともたくさんしてきた。
そもそも資本主義は、今までのやり方よりまあマシっしょ!
みたいな不完全なものだと思うので、
まだまだ試行錯誤の発展途上で、それは永遠に終わることは無いだろう。

話の内容は全くもって共感できないが、そう思ってしまう心理的状況はある程度理解できる。
でもまあ、やっぱ読んでいてダルいなと思った。

何もやる気がない時はお湯を沸かそう

タイトルのとりあえず湯を沸かせは、お母さんがおっしゃっていた言葉のようだ。
何もやる気は起きないし腰は重いけど、とりあえず湯を沸かしておけば、何か食えるし飲めるだろう。
みたいな感じのニュアンスだと思う。
これはめっちゃ良い言葉だと思う。

なーんにもやりたく無いけど、ご飯作らなきゃとか洗濯物しなきゃなど、色々考え始めると、より何かするのは億劫になってしまう。
けど、まあお湯ぐらい沸かしておくか、ぐらいの心持ちはめっちゃ大事だと思う。
人間元々やる気は無いもので、やっているうちにやる気が出てくる、みたいな話は最近よく聞く。
人それぞれスイッチはあるけど、お湯を沸かすというのは比喩的な意味でも、実質的にも温まる何かを感じる。
このタイトルだけの話でも、読んでみる価値は十分あると思う。

違った価値観にふれるいい機会になったなと思い込み、そっと図書館に返しました。
おしまい。

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