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カフカ

カフカが現実に完結させた物語がある。
 
晩年。カフカは恋人と散歩中、一人の女の子に会った。彼女は泣いていた。聞いてみると大切な人形がいなくなってしまったらしい。
 
「その子は元気だよ。僕がその子から君へ宛てた手紙を預かっている。明日渡しに行くよ」
 
カフカはそれから数週間、毎日手紙を書いた。人形が新しい世界を求め旅に出る物語。しかしカフカがその土地を離れる時が来た。カフカは物語の結末を悩んだ。また未完の物語が生まれるのだろうか。
 
カフカは旅立ちの日、少女に人形を渡した。それは長い旅の間にちょっぴり成長した人形であると。

カフカが眠る一年と少し前の出来事。
 
 
この手の物語は尾ひれがつくもので、実際のところは私もよくわからない。でも素敵なエピソードだと思う。カフカは物語を終わらせた。カール・ロスマンの様に永遠の失踪者にすることも出来たのに。人形は城に辿り着いた。
 
少女と人形は、その後どんな人生を送ったのだろう。よく夢想する。失踪者のその後を想うのと同じように。彼女と人形の物語は、カフカ不在で続いていく。
 
「中途半端のままにしておけないのだ。中途半端は仕事においてのことだけでなく、何ごとであれバカげている」
 
カフカが現実で、カフカなりにやり遂げた、終わりと始まりの物語。

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