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「ファスト教養」を読んで
ファスト教養という言葉に興味を持った。実生活の中で使われる教養という言葉は基本的には知識を指す場合が多い。教養がある人といえば雑学を知っていたり豆知識を豊富に持っていてたりするような人である。少なくとも私の周りではそういった認識の方々が多いような印象だ。しかし、教養とはなんだろうかと実際に考えたことのある人はどれだけいるだろうか。
広辞苑を引けば教養という言葉の意味は、「①教え育てること ②学問、芸術などによ人間性、知性を磨き高めること。また、そのことによって得られる知識や心の豊かさ。」と記載されている。これを見れば、教養 = 知識と考えても間違いではないように思える。それでは、知識とはそもそもどのような意味なのだろうか。再び広辞苑を引いてみる。
知識とは、「①ある事項について知っていること。また、その内容。 ② ㋐物事の正邪などを判別するはたらき。 ㋑知合い。友人。知人。善知識。 ㋒寺院の建設などのために寄進する人たち。 ③知られている内容。認識によって得られた成果。厳密な意味では、原理的・統合的に組織づけられ、客観的妥当性を要求し得る判断や命題の体系。伝統的に臆見的信念と区別され、「正当化された真なる信念」と定義される。 ④ものしり」
このように記載されている。これも特定の意味だけを取り出し合えば、一般的に認識されている教養の意味と齟齬はないように考えられてしまう。ただ、言葉とは、単一の意味を保持しているのではなく、中心要素から周りへ広がっていくような性質も持っていることを忘れてはいけない。
言い換えれば単一スペクトルではなく、連続スペクトルである。また、光子や原子、素粒子などと同じように粒子性、波動性を持つという認識で扱うべきものではないだろうか。もちろん同等のものではないにしても、人間を構成する原子の存在が不確定であるのなら発せられる言語、また言語の音を知覚したことによる神経系の電気的反応などがそれほど確かなものであるという保証はない。
人はその存在を記憶という経験に寄りかからせ、今まで大丈夫だからこれからも変わらないという不合理な潜在的意味づけをしている。これは人間の持つ特性だと言っていい。そのために言葉の単一的な部分を抽出し、誤った意味を見出すことは往々にして起こる。これは仕方のないことだ。しかし、このために起こる不整合に対しての認識を持っておくことは大切だ。教養という言葉の誤認識は、このようなタグ付け作業、まさにファストな表面的認知の弊害である。
また、IT技術の普及もこの傾向を促進している。YouTubeに関しては紹介されているが、IT技術の多くは繋がりが目に見えない。中身の知らないパッケージであってもインストールすればすぐに使え、技術の歴史的背景、詳細の理解が伴わなくても簡単に利用できる。このような環境下では、本来の裏側にあるつながり、体系を認識する必要性を覚えない。
また、資本主義という社会形態でさえも貨幣という媒体を何かしらの形で集めることができれば体系的な認識なしであらゆることができるようになる。この状況もまた、効率性、利便性、快適性を生む一方で弊害も含んでいる。周りの環境のあり方はそう簡単に変化させることはできないが、個々人の認識を少し修正していくことはそれぞれができることだ。
多くの情報を簡単に手に入れることができるというのは素晴らしいことだが、その性質、認知の仕方は意識するべきである。とりあえず知っておかないと会話に入れなかったり、教養がないと思わるのではないかと不安になったり、仕事で成果を出したかったりすることは悪いことではなく、新たな糸口を見つけたり、興味の扉が開く可能性があったり、社会への大きな貢献へとつながっていく可能性がある。だからこそ、認知のズレをなるべく排除して向き合うべきだ。
たとえ、ビジネスパーソンとしては意味を見いだせないような本を読んだり、自己啓発本に書かれていることをそのまま実践して失敗したりしても、それは自身の連続的な存在の一部分になり、物語の中のちょっとした寄り道になる、もしくは主題になるかもしれないが、そんな意識で教養を養えたら良いのだと思う。教養とは思っているよりも目に見えない大きなものだ。
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