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タダ働きでもプロの腕を見せる

「ん?」

原稿をチェックしていた私は違和感を覚えました。ある人の挨拶文に、以下のような記述があったのです。

以前は愛知県の飛鳥村というところで働いて…(以下略)

なぜこの文がおかしいと感じたかというと、愛知県飛鳥村という地名を見たことがなかったからです。こういう時はGoogle先生の出番です。

「やっぱりそやな」

愛知県にあるのは飛村で、飛村ではありませんでした。日本の地理に詳しいと、こういうミスにはよく気づきます。

しかし不思議なのは、なぜこんなミスが生じるのかということです。かつて飛島村で働いていた人が寄稿した挨拶文ですから、村の表記を間違えるはずがないのです。

すると、ミスをしたのは原稿を取りまとめた先方の担当者である可能性が高そうです。例えば、手書きで送られてきた原稿を打ち込む際に見間違えたというようなことが考えられます。

もし飛鳥村のまま印刷に進んでいたら、寄稿した方は誤りに気づくでしょう。自分は飛島村と書いたはずなのになぜ、ということになります。当社に送られてきた時点で飛鳥村になっていたのははっきりしているので、先方の担当者が謝罪したり何らかのペナルティを負ったりといった可能性もあります。私が担当者を救ったと言っても過言ではないでしょう。

「ありがとう。よく気づいたねぇ」

当社の担当者に感謝されたのは言うまでもありません。

「いえいえ。でも、やっぱりちゃんとしたライターを使わないと危ないんですよ。何度も言ってますけど」

こうした原稿に限らず、文書を正確に作成するのはけっして簡単なことではありません。だから私のような言葉のプロをレギュラーで起用するべきだと主張しているのです。蓄えてきた豊富な知識に加えて、初見の単語は検索してみるという習慣があるので、疎い分野でもある程度は対応できます。

ただ、担当者レベルでいくら言ってもクライアント側の予算には勝てません。プロをタダ働きさせてなんとかクオリティを確保できているのだから、好ましい状態とはとても思えませんが…。

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