定量化が分析に必須である理由
サイエンスに限らず、何かしらの分析を行う際にで必ず出てくる「定量化」についてしっかりと説明できるだろうか? なんとなく「定量化は計測して数値化する」という理解はされているだろうが、「対象を定量化するというのは一体どういう操作なのか?」そもそも「なぜ定量化するのか?」という解説は案外少ない。
そこで、この記事では「定量化」について完全に理解するための説明を行う。まずは、より基礎的な概念である「量」について説明した以下の記事を読んで欲しい。
「定量化」とは何か?
量とは、事物のある特定の特徴を取り出し、その特徴の大きさを表したものであった。またこの際には、質が捨象される、すなわち抽象化が行われている。
この量を抽出する手続きのことを「定量化」と呼ぶ(注1)。定量化は抽象化の一種である。抽象化について説明した記事は以下。
定量化という操作によって、「このリンゴはこの犬よりも軽い」といったように、別々の質をもった事物を比較することができる。また、いつどこで誰が測定した結果であっても明確に比較が可能になる。さらに、定量化しておくと、数式を用いて表される法則との照合が可能になる。
定性データと定量データ
定量化が行われていないデータが定性データである。インタビューの結果や映像データなどが定性データの例である。研究の初期段階で、着目すべき特徴が決まっていない場合などは、定性的なデータを用いて分析を行うことが多い。
また、定性という言葉は、「定性的な記述」「定性的な研究」などのようにも使われる。「磁石のS極とN極は引き合い、S極同士は反発し合う」などは定性的な記述の例である。
私たちは観察によって定性データや定性的に記述された法則を得る。
定量データは字面通り定量化されたデータのことで、「300g」「10cm」とかがその例だ。定量データには必ず[g]とか[cm]といった単位が伴う。サイエンスにおいて、単位は「どの特徴について定量化を行ったか」ということを表しているため省略してはいけない。また、単位が同じでないものは、足したり引いたりしてはいけない。
私たちは観測によって定量データや定量的に記述された(数式で表された)法則を得る。
定量化することの意義
定量化は自然科学において重要な手法である。その理由を説明しておこう。
「時間」という概念がある。「時間」は、地球の自転の一周期を[日]という単位で表すことによって定量化している。さらに、[日]を24分割したものが[時]である。それをさらに60分割して[分]。
このように定量化すると、「時間」という概念を客観的に表すことができる。いつどこで誰が見ても「1[日]」「1[時間]」は同じになる。そして、物事を客観的に表すことで、その背後にある繰り返し表れる本質を、実験や観測という活動によって確かめていくことができる。
分析の目的も科学と同様である。繰り返し表れる本質を捉えて、予測を立てたり、原因を明らかにすることだ。
本質とは何か? について書いた記事は以下。
運動方程式
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{ma=F}
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参考文献
池内 了(1996)『科学の考え方・学び方』岩波ジュニア新書
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