SENKIN/仙禽/せんきん

「古くて新しいものづくり」をモットーに、超自然派日本酒を創造する『せんきん』の十一代目…

SENKIN/仙禽/せんきん

「古くて新しいものづくり」をモットーに、超自然派日本酒を創造する『せんきん』の十一代目蔵元・薄井一樹が、色とりどりの『ニホンジン』と対談していたこれまでの先にある、これからの仙禽を語ります。更新は毎月1回を予定しています。

最近の記事

江戸に返る #1

米は嘘をつくなぜ酒をつくるのか。 「何のために」と言い換えてもいい。 酒づくりに携わるようになって繰り返し自問してきたことです。 その答えが、年を追うごとに変わりつつあります。 きっかけは、米です。 仙禽では、2011年から、蔵のドメーヌ化を本格的に進めてきました。 ドメーヌ化とは、米づくりから酒づくりを手掛けること。 ぶどう栽培からワイン醸造、瓶詰めまでを自社で手掛けるフランスの「ドメーヌ」に倣い、ここ最近は日本酒業界でもよく聞くようになった言葉です。 ドメーヌ化にあた

    • #8 からだに合った食を求め、価値あるものを提供する営み(後編)

      料理人ですけど、あまりお酒呑めないんです!薄井 今まで僕がお話をしてきた人たちは、江戸料理の研究をされている方であったり、地元でお米を作ってくれている方で有機農業の第一人者だったり、みんなやっぱり全然違うことをやっているのだけど、考え方が一つの線で繋がっていく感じがします。久仁子さんがやっている狩猟というところから、ご自身でそれを人の口に入るお料理として提供されるっていう姿は、僕も凄く感銘を受けています。僕は日本酒を生業にしていますが、生活必需品ではない嗜好品ではあるけど、

      • #8 からだに合った食を求め、価値あるものを提供する営み(中編)

        大きな交通事故がきっかけで狩猟と料理に向かいあった薄井 時系列でいうと狩猟と、料理人は、どっちが早かったのですか? 竹林 あ、両方、ほぼ同時だった! 薄井 同時ですか。それはおどろきです。 竹林 自分もこうなると思っていなかったって言っちゃなんですけど、料理は8年目、狩猟は9年目になるんですけど、交通事故がきっかけだったんです。結構大きいダンプに轢かれちゃって、3年ぐらい車椅子でした。 薄井 3年も・・・それで、よく山にも行けるくらい歩けるようになりましたね。重傷を

        • #8 からだに合った食を求め、価値あるものを提供する営み(前編)

          竹林さんは、小田急線の喜多見駅のそばに〈ビートイート〉というレストランを営んできた。狩猟免許を持つ料理人の出すジビエ料理とスパイスカレーが評判を呼んで、2024年の春は 新たに原宿にもカレー専門店を出店する。今回は、竹林さんが狩猟を始めるきっかけやジビエ料理を通して考える日本の食のありかたを3回にわたって伺っていきます。 (※ジビエはフランス語で狩りの対象となる野生の鳥獣の肉のこと。英語ではゲームミート。お話は狩猟シーズン真っ盛りの冬場にお聞きしました) 狩猟に行く山は女性

          #7「EDO STYLE」~本当の健康食とは~(後編)

          EDOは完全サスティナブル薄井 永山さんとお話してきて、江戸って実にサスティナブルだなあ、と改めて思います。 永山 江戸時代は完全にサステナブルです。今、地球が目指そうとする方向性を江戸の人たちは持っていたんです。サステナブルじゃないと地球はもちません。気候は沸騰するだろうし、もう冬なんか来なくなっちゃうかもしれない。ツンドラみたいなところで仮死状態にあったウイルスが覚醒するんですよ。で、新しい病気が流行る可能性も! 薄井 食品も加工されたものが大半で全然サステナブル

          #7「EDO STYLE」~本当の健康食とは~(後編)

          #7「EDO STYLE」~本当の健康食とは~(中編)

          江戸グルメは長寿食薄井 ここからは、江戸時代の文化文政の頃、酒造りが盛んになったというお話を。仙禽も文化3年(1806年)に創業した酒蔵です。 永山 そうでしたか。なぜ、文化文政の頃、非常に酒造りが盛んになったかというとグルメ時代が到来したから!・・・という話からですね。 永山 将軍でいうと、第11代の徳川家斉の時代で、身分が高い者から江戸の町民に至るまで、みんな口が肥えてくるんですよ。もっと美味い酒ができるはずだ、もっと美味い醤油を、などとニーズが高まって料理の味付

          #7「EDO STYLE」~本当の健康食とは~(中編)

          #7「EDO STYLE」~本当の健康食とは~(前編)

          永山さんは昭和9年生まれ。古代から明治時代までの食の特徴を研究し、食事復元研究の第一人者として知られています。『和食の起源』『日本人は何を食べてきたのか』(青春出版社)、『万葉びとの長寿食』(講談社)、『日本古代食事典』(東洋書林)など著書も多く、古代食や長寿食をテーマに、新聞連載、テレビ、ラジオにレギュラー出演、講演などで今も元気に大活躍です。 有機農業がおいしい理由薄井 永山さんに、お会いするのは初めてですけれども、私自身が日本酒を造ってまして、長い歴史の中で日本酒も様

          #7「EDO STYLE」~本当の健康食とは~(前編)

          #6「自然の循環の中で、米づくり、酒づくり」(後編)

          リセット、そして脱ケミカル 薄井 歴史を見ていくと、日本が敗戦国になってしまったのが致し方ないのかもしれませんけれど、GHQが介入して、アメリカの傘下、アメリカの言いなりになって、高度経済成長を築き、今がある。けれども、やはり豊かさ・便利さの裏にある、極めて危険な大量にものを作るっていう・・・それの反動が来ますね。いま、小麦大国じゃないですか日本って。 杉山 そうですね。大量の化学窒素を畑に入れると、できた小麦のグルテンの含有量が増えて。極端に入ってなければそんなに影

          #6「自然の循環の中で、米づくり、酒づくり」(後編)

          #6「自然の循環の中で、米づくり、酒づくり」(中編)

          身勝手な人間には、いつか自然のしっぺ返しがくる 薄井 前回された、無駄なものがないという自然の循環の話をもっと伺いたいのですが・・・ 杉山 人間が、自分たちの都合で農薬や化学肥料を使うので自然の循環が崩れてしまっているのが現代です。温暖化にも拍車をかける。すると却って必要のない虫が大量に発生したりとか、そういうことが今起きてると思うんです。 薄井 それをどう受け止めてますか? 杉山 田んぼの生き物たちが人間を「信用できるか」って向こうから敵視してる・・・有機農業を始

          #6「自然の循環の中で、米づくり、酒づくり」(中編)

          #6「自然の循環の中で、米づくり、酒づくり」(前編)

          杉山さんは、江戸時代から続く農家を継いで、有機栽培に取り組んでいます。 “癒やしの大地から癒しのお米を作る”とは、たんぼにいる生き物たちの命が健康であれば、健康な命たちがたくさん集まっていっしょに作物作りを行い、出来上がった作物たちも健康に育って、きっと人間にも健康な命を分けてくれるのではないかと考える、健康な命の循環・・・それが、有機農業の第一人者と呼ぶにふさわしい杉山さんの農法の基本。 仙禽も、杉山さんが育てた酒米「亀の尾」からピュアな酒を創っています。 今回は、杉山さん

          #6「自然の循環の中で、米づくり、酒づくり」(前編)

          #5「わざわざ人の手が時間をかけて作ったものを発信したい」(後編)

          薄井 そもそも陶芸家になったきっかけは? 鈴木 実は叔母が東京芸大の油絵科を出て、美術教師をしていましたが、ずっと陶芸を趣味でやっていたので。一緒に暮らしてたこともあって、小さい頃から叔母の手作りの器で育った影響もあるんです。叔母は、定年退職後は陶芸教室をしていたので、「手伝って」って言われてろくろを回したりしてました。 薄井 えー! もうそこで自分の進むべき道が決まったんだ。 鈴木 だから、美大とかに行ってないんですよ。訓練校にも行ってないので。 薄井 僕と

          #5「わざわざ人の手が時間をかけて作ったものを発信したい」(後編)

          #5「わざわざ人の手が時間をかけて作ったものを発信したい」(前編)

          鈴木麻起子さんは茨城県笠間に拠点をおいて活動している陶芸家。 2003年に独学で制作活動をはじめ、2006年に自身のブランド〈Pot Blue〉を設立。 2009年より〈La Maison de Vent(風の家)〉にブランド名を改名。 仙禽とは、鈴木さんのテーマカラーでもあるターコイズブルーとコラボした熟成酒「Turkish」(限定品)が生まれて以来のお付き合いで、すっかり意気投合。 今回は、鈴木さんのアトリエをお訪ねして、あらためてお話を伺いました。 薄井 最初に会った

          #5「わざわざ人の手が時間をかけて作ったものを発信したい」(前編)

          #4 「人生を変える原料からこだわるものづくり」(後編)

          薄井 化粧品の成分開示についてこだわる、そのきっかけは何だったんですか? 吉田 私自身が幼少期の頃からすごく肌が弱く、26歳まで家族以外には誰にも素顔を見せられなかったんです。いろんな化粧品を使っても酷くなるばかりで解決しない中で、ナチュラルなものを使うのがいいのでは、というのが化粧品業界に飛び込んだきっかけです。 薄井 それだけ苦しかった体験があると共感してくれる人は多いでしょう。 吉田 今の会社に就職して「完然無添加(*)」を学ぶと同時に、私と同じ悩みを持つ人

          #4 「人生を変える原料からこだわるものづくり」(後編)

          #4 「人生を変える原料からこだわるものづくり」(前編)

          吉田栞さんは、子どもの頃から酷い肌荒れによる自身へのコンプレックスに苦しんだ経験から、「人生を変える化粧品をつくりたい」と化粧品業界に。 商品企画・開発に従事し、2020年4月に社内ベンチャーとして「unito(ユニト)」を立ち上げ、仙禽とのコラボでも話題に。 お酒と化粧品、一見、遠い世界のような業界ですが、原料からこだわるものづくりにおいてお互い学びあうことが多く、今回、あらためて横浜のオフィスをお訪ねして、じっくりお話を伺いました。 薄井 仙禽に来ていただいたのは去年で

          #4 「人生を変える原料からこだわるものづくり」(前編)

          #3 「サスティナブルな創造」(鼎談編)

          山本乃々佳さんは、栃木の高校3年生、将来は政治家になりたいという希望を抱き、日本の明るい未来を切り開く若きインフルエンサーとして活躍しています。 「高校生プレゼンテーションコンテスト国際学生賞高校生プレゼンテーションコンテスト国際学生賞」「高校生プレゼンテーションコンテスト最優秀賞」など輝かしい成績を残しながら、さらには「サステナブルコスメアワード」の学生審査員に高校生としてはじめて選出される等、オーガニック・サステナビリティの推進においても幅広く活躍されています。 また、t

          #3 「サスティナブルな創造」(鼎談編)

          #3 「サスティナブルな創造」(後編)

          薄井 最初、都会の若い女性をターゲットに里山に来てもらって、オーガニックな農産物を五感で体験してもらうフェスの立ち上げから始まって、オーガニックを軸としたサスティナブルな社会づくりに向けての活動が始まったんですよね。 小原 当初はフェスを開催するっていうところをメインアクションにしてましたが、2016年に環境省の、後に事務次官を務められた中井徳太郎さんていう方と出逢いまして、国の予算や政策というトップダウンだけではなく、私たち市民一人一人の意識や行動からボトムアップで変え

          #3 「サスティナブルな創造」(後編)