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"歴史" 系 note まとめ

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#中国

古代中国の世界に入り込む「金陵図数字芸術展(金陵図デジタル芸術展)」

 中国の博物館や展示について、皆さんはどれくらいご存じでしょうか。どのような展示施設があって、日本の展示とどう違うのだろう、と気になっている方もいるかもしれません。  今回は2023年の年末に尋ねた中国南京市にある徳基芸術博物館の企画展「金陵図数字芸術展」をご紹介します。 はじめに  中国国内でも大都市の一つ南京市(名古屋とは姉妹都市です)にある大型商業施設「南京徳基(Deji Plaza)」内にあるのが徳基芸術博物館です。博物館は南京徳基の8階フロア全体に広がっています

【ニッポンの世界史】#25 越境する中国史:陳舜臣のユーラシア的想像力

 この評伝で紹介されているのは、1970年代の大衆歴史ブームを土壌として、日本を超える視点から、イスラムと中国を繋ぐ立場を果たした作家、陳舜臣(1924〜2008)です。  この陳舜臣という人が、「ニッポンの世界史」の再定義に、どのようなかかわりをもったか、今回はこれをみていくことにしましょう。 中国史の案内人  陳の魅力をひとことでいえば、まるで見てきたかのように中国の歴史を解き明かし、現代世界とのつながりを意識させるところにあります。    本籍は台湾にありましたが

鄭和(ていわ)は、なぜ何度もよみがえるのか? "今"と"過去"をつなぐ世界史(13)

"今"と"過去"をつなぐ世界史(13) 1200年〜1500年の世界 死せる孔明、生ける仲達を走らすというように、英雄は何度もよみがえる。明代の宦官にして武将として知られる鄭和(ていわ)もその一人だが、よみがえりの形は、かならずしも生前のすがたそのものとは限らない。 史上の鄭和は、時の皇帝・永楽帝に見出され、大船団を率いて東南アジア、インド、セイロン島からアラビア半島、アフリカにまで7度にもわたり航海を成し遂げた人物である。 ムスリム(イスラム教徒)であった彼ならば、イ

【いまどきの世界史教科書?】増えた用語 消えた用語

3月も残りわずかとなりましたが、新年度の授業準備をあれこれとしています。 あたらしい教科書が届くと、前の版との違いをなんとなく確認するのが習わし。とくに今回は新しく設定された「世界史探究」という科目があるため、わけがちがいます。気合を入れて異同をチェックしてみると、これが結構変わっている。 たとえば、 といった具合です。 今回は索引をベースにし、山川出版社の『詳説世界史B』の最新の版と『詳説世界史探究』を比べ、消えた用語と増えた用語を確認しました。 デジタルで全文検

大衆本の世界史 (1) : 17世紀の謎・ヨーロッパと日本で大衆本が同時発生

 江戸時代は、大衆本の文化が花開いた時代です。江戸には1000軒以上の貸本屋があり、武士も町人も新刊本を求めて詰めかけていたといわれます。  しかし、17〜19世紀の同時期にイギリス、フランス、中国など洋の東西で、よく似た大衆本ブームが起きていたことは、あまり知られていません。面白い現象だと思うのですが、近代の大量出版が始まるとほぼ忘れ去られてしまったため、これらを比較した研究はほとんどないようです。  本稿では、17〜19世紀のヨーロッパと中国の大衆本を日本と比較したう

2-3-5-2. 唐の滅亡と東部ユーラシアの変動

遣唐使はなぜ停止されたのだろうか? 894年、菅原道真の建議により、遣唐使が廃止された。 唐の治安の悪化や海上交易の危険などが主な理由だ。 だが、そのほかにも原因がある。 古来、仏僧は遣唐使に随行し、中国に入ることが多かった。 しかしこの円珍という僧が唐に入ったのは、新羅(しらぎ)の商人の船に乗ってのことだった。5年の歳月を経て、858年には唐の商船で帰国する。 要するに、唐はかつてのように公的な使節ではなく、商人による往来も認めるようになったのだ。 平安貴族の愛

2-3-5-1. 隋唐帝国と東部ユーラシア 新科目「世界史探究」をよむ

突厥の台頭 中央ユーラシアのうち、以下の地図中のステップにあたる地域が、遊牧民の活動エリアである。 6世紀のなかばになると、トルコ系の遊牧民の突厥(とっけつ)が、柔然をたおし、モンゴル高原の覇者となった。 突厥は、西方ではエフタルを滅ぼし、タリム盆地やアム川・シル川流域のオアシス都市と協力関係を結び、広大な遊牧帝国を築いた。 商業民のソグド人の交易活動が拡大したのも、突厥が中央ユーラシア大陸広域に秩序をもたらしたおかげである。 また、西方のビザンツ帝国とも外交関係を結ん

朝花夕拾。人民文学出版社が経営する北京のカフェの文豪カフェラテを飲みたい

新しくできた面白いカフェを見つけました。今日は中国の歴史ある国有出版社の人民文学出版社が運営しているカフェの「朝花夕拾」を紹介します。 店のフルネームは「朝花夕拾文創咖啡供销社」。朝花夕拾というのは魯迅の有名なエッセイ集で人民文学出版者が発行した本です。文創というのは簡単にいえば独自デザインのグッズがたくさん置いてあるお店となります。また、供销社は購買販売協同組合という意味で、言い方自体は改革開放前の時代を感じられます。 ↑住所も人民文学出版社と一致しています。 ↑店自

2-2-3. 中華文明 新科目「世界史探究」をよむ

「中国」って何だろう?「中国」という言葉の初出は、西周代の金文や、前10世紀から前8世紀頃の詩歌を集めたといわれる『詩経』にある。 太字の部分は、「この京師(けいし)を恵(め)でて以て四方を綏(やす)んぜよ」と読み下す。 しかし、ここに出てくる「中国」は、現在のわれわれが考えるような領域をもつ広い中国ではなく、成周(現・洛陽)や殷の都・大邑商を含めた殷の首都圏を指すと考えられる。 そもそも黄河や長江の流域を中心とし、渤海・黄海・東シナ海に面するユーラシア大陸東部の北緯2

ベトナム歴史秘話:なぜ民族の英雄は、巨乳として歴史書に記録されたのか?

近世ベトナムの公式歴史書において中国と戦った民族の英雄ながら唯一、その胸の巨大さについても言及されている女性がいます。19世紀、ベトナム皇帝でさえもその理由が分からずに困惑したという歴史書の記述です。 なぜ彼女の胸の大きさは公式の歴史書に記述されたのか、そこにはどんな理由があったと考えられるのか。ベトナムの歴史書、中国の歴史書の原文における記述を探し出し、古代・中世・近世とその記述の変遷を調べることで、中越関係における英雄の実像と真相について探ってみました。 1. 三国志

胎中千鶴『あなたとともに知る台湾―近現代の歴史と社会―』(歴史総合パートナーズ⑥)清水書院(2019年)

「高等学校の新科目『歴史総合』に向けた新シリーズ!」ということなので高校生向けなんですが、大人の台湾入門書としてもバッチリの優れものです。台湾については、これまで習ってこなかった方が多いでしょうからね。 ところで「歴史総合」ってなに?とネット検索してみたら、こんなページに行きあたりました。 日本学術会議さん、ちゃんとお仕事されてます。(ホントだ) 「本書は、日本と台湾という『ふたり』の関係に力点を置きながら、台湾の近現代史を概観」したものです。台湾についてすべてを網羅し

【試し読み】『中国料理の世界史』

チャジャン麺、フォー、パッタイ、海南チキンライス、チャプスイ…… チャジャン麺は「韓国料理」、フォーは「ベトナム料理」、海南チキンライスは「シンガポール料理」としてすっかり浸透していますが、これらすべて、もとは中国にそのルーツをもつ料理なのだそうです。 なぜ中国料理は世界中で愛され、食べられているのでしょうか。 『中国料理の世界史——美食のナショナリズムをこえて』は、国家建設とナショナリズムに注目しながら、中国料理の成立と伝播の過程を探ります。 本書を手に取った方が驚

王安石の誕生日

昨日(2021年12月18日)、宋代の詩人・蘇軾(蘇東坡)についてまとめる機会があり、色々と資料を見ていたら、たまたま昨日が「王安石」生誕から1000年にあたるアニバーサリーデーだということに気づきました。 王安石の誕生日は、1021年12月18日。もちろん旧暦での日にちなので、ぴったり同じ日という訳ではないと思いますが、たまたま発見したその偶然に、しばしの間、感慨に耽ってしまいました。 世界史で学んだ人も多いと思いますが、王安石というと、宋代に「新法」と呼ばれる改革をお

【ざっくり中国史㉔】「国民党」と「共産党」

中華民国が建国されてすぐの頃、第一次世界大戦が勃発します。 中国大陸に進出していたヨーロッパ各国は、ヨーロッパでの戦争にかかりきりになっていたため、ヨーロッパ各国による中国への圧迫が和らいだわけですが、これをしめしめと近寄ってきたのが日本です。 日本はドイツ帝国が保有していた中国内の工業や商業の権益を引き継ぐほか、中華民国の軍や警察に日本人の指導者を入れることなどを求めた「二十一カ条の要求」を中華民国政府に突きつけたのです。 その後、日本側が一部の条件を取り消したとはい