夜はやさし
フィッツジェラルド生前最後の長篇小説。
いわゆる、アフター「グレート・ギャツビー」。
僕は集英社(ホーム社)から出ているオリジナル版を読んだ。
かいつまんで言うと、これが出版されたときあまり評判がよくなかったため(9年かけたのだが)ガラっと構成を入れ替えて再編版も出版されることになり、どちらかというと流通している多くはそちらの方らしい。
そのあたりの背景なるものは、村上春樹氏の「ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック」に記されているがそのあたりは割愛するとして。(良いことがたくさん書かれていました)
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主人公の精神科医ディック・ダイヴァーは、グレート・ギャツビーの主人公ジェイ・ギャツビーと重なるいろいろはあった。
この記事はできるだけネタバレしないように書こうと思っているし、ぜひ読んでいただきたいというつもりで書くけれど、あえてポイントを記すなら…
いろいろと努力をして手に入れ、もてなしの能力に長け、周りをハッピーにさせる性質を彼(ダイヴァー)は具えていた。
それをもって周りの女性の多く、いや女性に限らず皆は、彼の魅力に釘づけになっていった。
ところが…。
ダイヴァーの妻ニコルは元(?)患者であり(精神的な病をかかえた)、いわゆる先生と患者という間柄の域を超えて結婚するわけだが、ここに若き女優ローズマリーが現れる。
ローズマリーはずいぶん年上のダイヴァーに一目惚れをし、両者は惹かれあっていくのだが、その過程でダイヴァーはアルコールに溺れ、いろいろなことを失っていく。
ただダイヴァーに依存してきたようなニコルの側にも変化が訪れる…。
人はいかにして誰かを癒し、人はいかにして自らを癒えてゆくのか。
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550ページほどある長篇で、正直なところやや冗長な感じも否めなかったが、逆にそれが人生の深みの裏側にあるものをリアルに描いていたように思う。
ちょっと僕はこの物語について誰かに「好きな作品」と伝えることにこっ恥ずかしさが伴うかもしれない。
これもまた作者フィッツジェラルド自身の人生なのかもしれないけれど、時代も国も超えて僕の心に飛び込んできた。
ということで今回も、最も感動したシーンについては書かないこととしまして(笑)ぜひ、読んでいただきたいと思います。
(個人的に、ダイヴァーに重なるところがいろいろありましたが、もちろんそんなこともここには書かず…)
特に「グレート・ギャツビー(華麗なるギャツビー)」が好きな方は、ぜひ「夜はやさし」も。
いろいろな感想をもたれるのではないかと思います。
(書影は https://www.amazon.co.jp より拝借いたしました)
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