結婚式のメンバー
【著書紹介文(出版社Webより)】
この街を出て、永遠にどこかへ行ってしまいたい――むせかえるような緑色の夏、12歳の少女フランキーは兄の結婚式で人生が変わることを夢見た。南部の田舎町に暮らし、父や従弟、女料理人ベレニスとの日常に倦み、奇矯な行動に出るフランキー。狂おしいまでに多感で孤独な少女の心理を、繊細な文体で描き上げた女性作家の最高傑作を村上春樹が新訳。《村上柴田翻訳堂》シリーズ開始。
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カーソン・マッカラーズの村上春樹訳を時系列で読んでいる。先日よんだ「心は孤独な狩人」は1940年の作、本作「結婚式のメンバー」は1946年。
主人公であるフランキーは「世界」とつながることを意識しながら、自分とは何かを問うている。また、本作はマッカラーズの自伝的小説ということもできる(マッカラーズがフランキー)。
僕(誠心)は、ベレニス(黒人の女料理人)のキャラがけっこう好きだ。フランキーのなかなかとんちんかんな発言へのツッコミにも愛があふれている。
さて、僕は世界とつながっているだろうか?世界とはいったい何だろうか?これまでいろんな物事とつながってきた。フランキーのひと夏のように、一瞬にして過ぎ去ってしまったような気もする。そして今もまた過ぎ去っているのだと気づく。
僕の答えはイエスだ。世界とつながっている。そして、世界とこそつながりたかったのだと。
フランキーの渇きは、僕の渇きでもある。
12歳のフランキー少女をみながら、ここ数年の自分を見ているようでもあった。
小説を読むことで得られることのひとつは、このように世界とつながるという体験なのかもしれない。
であれば、日常のいろいろは些末なことなのかもしれない。年の初めにふさわしい1冊であった。
※4年前に読んだ際のレビューはこちら
https://note.com/seishinkoji/n/ncb7a38d17e12