ワイルドなのに先進的なスポーツ・車いすラグビー。日本が悲願の金メダル。パリ・パラリンピック。過激な衝突。男女混合でボールを追う。日本はワンプレーごとに強化を図った
ワイルドなのに先進的なスポーツ。それが車いすラグビーだ。パリ・パラリンピックで日本が悲願の初優勝を果たした。過激な衝突が伴う一方で、男女混合でボールを追うゲーム。日本はワンプレーごとの強化に取り組み、これまで3大会連続で敗れていた準決勝を突破。決勝では強豪の米国を破って、頂点へ駆け上がった。タフな選手たちの笑顔が素敵だった。
車いすラグビーの「タックル」は激しい。「ガッシャ―ン!」。まるで交通事故でも起きたのではないかと思うような衝突音が響く。時には車いすが倒れることもある。ワイルドな競技だ。
一方で、男女が共にコート上のボールを追う。男子は男子だけ、女子は女子だけといった区分けをしない。そこに先進的な意味合いを帯びている。
2日(日本時間3日)に行われた車いすラグビー決勝。日本は1次リーグを3戦全勝。これまで3大会連続で跳ね返されていた準決勝の壁も突破して、勢いに乗って頂上決戦に臨んだ。
相手は強豪の米国だ。過去6大会すべてでメダルを獲得している。第1ピリオドは11-14と3点を追う形となった。しかし日本は慌てない。
ここから自慢の守備が機能していく。相手がボールを持っていると、コート上の4人全員が敵陣深くまで追い込んでいく。サッカーの「ゾーンプレス」のようなプレッシャーだ。これで相手のパスを封じていった。
日本の攻撃的な守備で第2ピリオド以降、米国に各ピリオドで二桁得点を許さなかった。
そしてワンプレーごとに区切った練習が実った。1センチ単位でポジション取りなどを鍛えていった。女子の倉橋香衣選手は「練習でやったな」と思いながらプレーできたと手ごたえを口にした。
ワイルドな競技で細かく鍛え上げていった日本。昨年就任した岸光太郎監督は「練習通りのプレーをしよう」と選手たちに指示した。日本は前半を24-23でリードし、第4ピリオドで突き放した。48-41の快勝。ついに頂点に駆け上がった。
ワイルドなスポーツだけに見応えがある。さらに男女混合でボールを追うから先進的だ。車いすラグビーの未来は明るい。その競技で金メダルを手にした日本。もっと、もっと注目されて良い競技だと思う。
タフな選手たちが金メダルを首にかけて喜ぶ笑顔は素敵だった。車いすラグビーの選手たちに心から祝福を送りたい。