娘、腹痛・嘔吐・顔面蒼白の巻
それは昨夜のことでした。
息子と私で夕飯の後片付けをしていると、娘と入浴中の妻の悲鳴にも似た叫び声が聞こえました。
「惺仁さん!沙耶ちゃん(仮名・3歳)が!!」
只事ではない雰囲気を感じましたが、滑って転んで頭部外傷で緊急入院にならないように、慎重に足を運びます。
「沙耶ちゃんが『お腹痛い』って言った後に吐いちゃって、なんか具合悪そうなの!」
食物残渣が浴室の床にあります。赤くも黒くも緑色でもありません。吐血や胆汁ではないのでしょう。っていうか顔色悪ィ。娘の顔が蒼白です。夕飯まで元気にしていたのに、あんなにたくさん食べていたのに…食べ…食べ過ぎかな。うん。
娘をバスタオルで受け取り居間に戻ります。速やかに回復体位をとらせて診察を始めます。
意識清明。徐脈。腹部軟、左上腹部から下腹部にかけて圧痛あり、反跳痛なし。McBurney圧痛なし、Murphy陰性です。息子に娘を見守るよう伝え、棚から聴診器を取り出します。腸蠕動音が亢進していますが、変な音は聴こえません。
「①診断は何か。②適切な対応を選べ。」と設問の続く医師国家試験的展開です。よし任せろ。
これは迷走神経反射です。
ちょっと食べ過ぎて胃腸がぎゅるぎゅる動いたことで蠕動痛を生じ、入浴というリラックス状態であったことも重なり副交感神経が過緊張になったために、徐脈と血圧低下が誘発されて嘔気嘔吐に至ったと考えます。すると安静経過観察が正解です。
しかし漢方医はこれで終わりません。
回復を早めて根底の不調も治そうと考えます。両脚、両腕、腹部の適切な箇所に鍼を置きましょう。足三里は胃経、手三里は大腸経、気海は任脈の経穴で腹痛や自律神経失調に効果を期待します。鍼を置いて数分もすると血色も良くなり腹痛が和らぎました。座位を取ることが出来るようになったので、漢方薬を與えましょう。
脈は沈弦、脾胃虚です。腹は腹直筋の緊張が目立ち、左側のみ胸脇苦満がみられます。黄耆建中湯が最適です。小建中湯でもよいのだけれど、腎や肝への作用も期待して黄耆を加えます。
娘は美味そうに漢方薬を飲み干して、30分も休むとすっかり元気に走り回れるようになりました。
一件落着。
拙文に最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。願わくは貴方のおなか、いたいのいたいのとんでいきますように。
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