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逆子を治す 【漢方医放浪記】

 逆子が治らなくて、と溜息の妻。

 胎児の頭が下にある「頭位」以外の状態を、一般に逆子と表現します。横位とか骨盤位とか足位なんて状態もあるのだけれど、ともかく逆子は分娩時の合併症リスクが高いものですから、昨今では逆子が治らない場合には予定帝王切開が通例です。逆子という不調は医学的に原因不明であって、西洋医学は穏やかな解決策を持ち合わせておりません。

 妊娠後期に突入してから逆子な悩みが続く中、全体的な体調メンテナンスを重ねました。冷えやら、むくみやら、なんやかんやの不調に漢方薬。一家に一人漢方医がいると便利です。

 然れども、逆子。治りません。

 ある日、妻が言いました。

「鍼灸治療で逆子が治るって、聞いたんだけど…」

 鍼灸で?そんなこと見たことも聞いたことも…いや待て、ある。あるぞ。古書で読み覚えがあります。

 私は書物を紐解いて治療法を確かめます。こういう時は真偽不明なweb情報よりも成書がいい。それから医学論文を検索して、現代医学研究でも逆子に対する鍼灸が好成績であることを識りました。

 さぁ、施術を始めましょう。

 両側の三陰交と至陰に置鍼。その上から灸を据えます。次いで治療を要する兪穴を見極め、太衝、手三里、合谷に灸。三陰交と至陰は要穴だけあって、一壮では足りません。二壮、三壮と続けていって、六壮で良好な反応が得られました。

 施術中、徐ろに身体が楽になってきた、と彼女が言いました。直後に腹部が緩まる感じがして、胎動が活発になった様子。みますと、胎児の頭の位置がじわじわと動いております。即効性パネェ。


 翌日の健診では、逆子が治っていたそうな。


 この漢方医、逆子を治したのは初めてです。

 鍼灸の効果に驚いたエピソードでありました。



 拙文に最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。願わくは、世の中の逆子がくるんと素敵な位置におさまりますように。



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渡邊惺仁
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