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檸檬
梶井基次郎さんの『檸檬』を読んでから、レモンの魅力に取り憑かれました。いかに言葉を尽くしても、あれほどレモンな文章を私には書けません。ご興味のある方は、青空の下で読める文庫に収載されていますから、ググれば一発です。
私は憂鬱になるとレモンをひとつ購入します。
あれは実に良いものです。
いったい私はあの檸檬が好きだ。
レモンエロウの絵具をチューブから搾り出して固めたようなあの単純な色も、それからあの丈たけの詰まった紡錘形の恰好かっこうも。
そんな気持ちで購入したレモンを見つめます。そうして、
私は何度も何度もその果実を鼻に持っていっては嗅かいでみた。それの産地だというカリフォルニヤが想像に上って来る。漢文で習った「売柑者之言」の中に書いてあった「鼻を撲うつ」という言葉が断きれぎれに浮かんで来る。そしてふかぶかと胸一杯に匂やかな空気を吸い込めば、ついぞ胸一杯に呼吸したことのなかった私の身体や顔には温い血のほとぼりが昇って来てなんだか身内に元気が目覚めて来たのだった。
というような感覚に陥ります。
机にレモンを飾って掴んでまた置いて。
香りと質感をひとしきり楽しみながら、
「つまりはこの重さなんだな。」
なんて呟いてみます。完全にヤバい人です。
しかし不思議と気持ちが落ち着いてくるようで、憂鬱は次第に薄らいでいきます。憂鬱が薄らいできたら、徐に立ち上がり、レモンをしっかりと握ってキッチンに向かいます。まな板の上にレモンを安置し、取り出した包丁で腹部を離断します。切り分けた果実の片方は冷蔵庫に仕舞って、残りを搾ります。蜂蜜を加えて炭酸水で仕上げると、レモンスカッシュの完成です。気分に応じてレモンサワーにしてもいいし、温かい蜂蜜レモンも素敵ですね。
これを飲み干す頃には爽快感が憂鬱を凌駕して、陰鬱な気配は霧散していきます。
憂鬱を感じた時のルーチンワークに組み込むことで「何もできない」から脱却して気分の揺れをゼロ点に戻す手掛かりになっています。
そして今、手元にレモンがひとつ。
貴方は憂鬱を感じる時、どのように対処しているでしょうか。
もし何も手段のないような方がいらっしゃいましたら、ご一緒にレモンはいかがですか。
拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方の憂鬱が清涼感と共に、何処かへ飛んでいきますように。
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