「脈診」とは何か/漢方医放浪記
風邪ひいてますか、と脈を診察しながら問い掛けると、彼女は目をぱちくりしながら「いいえ」と答えました。でも、と彼女は続けます。数日前から家族が風邪をひいていて少し倦怠感はあります、と。
「そうでしょう。感染していますね。発症するかどうかギリギリのところです。ここで身体を冷やすとか、無理をして疲れ過ぎると発症しますから、お気をつけて。」
「脈でそんなことまで分かるんですか!?」
「ええ、分かります。今の身体の概要と、五臓六腑の状態を診ています。」
「どうして。」
「さぁ。中国4000年の歴史ですからねぇ。師匠について身につける、職人技のようなものですよ。」
平素の体調が随分と改善してきた彼女に処方箋と再診票を手渡して、お大事に、と見送りました。
複雑怪奇な東洋医学の世界において、「脈診」は特に理解と修得に困難を極めます。高名な東洋医学者でさえ脈診は主観的だとか科学的でない等と主張する人もあるほどで、しかし古典には当然のように脈の所見と診断治療法が克明に書かれています。
科学とは対立する手法かもしれませんが、主観というのは些か残念な表現です。そうすると全ての身体診察法が主観ということになってしまう。当たり前に実施される全ての西洋診察と同様に、東洋医学における脈診は普遍的であるはずです。ただ、指先の繊細な感覚で捉えるという性質上、修得できない医者が存外に多いのだけれど。
脈診には身体の全体像を診る「脈状診」と、五臓六腑の状態を観測する「六部定位診」があります。流派によって差異はあれども、基本はコレです。
例えば脈ひとつで同級生の腎臓病を見つけたり、患者の死期を予見したり、なんやかんや色々なことが出来るようになります。次々と不調を言い当てて陰陽五行思想に基づいた病態と治療戦略を説明していると、時折「占い師みたい!」と驚かれることもございます。
ええ、実は占い師です。
西洋医で漢方医で占い師という特殊なプロファイルを引っ提げて、私は今日も診察室に向かいます。
普通の方法では解決し得ない悩み事には、形而上学的アプローチを以て応対いたしましょう。
拙文に最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。願わくは、仄暗く混迷する社会にも希望の光が差しますように。
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