植物ミルクという選択が市場を変える
キッコーマンの特濃豆乳のパッケージにはやたら健康を示唆する表示が多い。「コリステロールを下げる」「血糖値を下げる」など。
健康志向の消費者の心をつかもうとして、かなり強調されている気がするが、公式サイトには驚くほどの豆乳バリエーションがあることがわかった。
これは面白い。全く新しい世界が広がっている感じでだ。これはアメリカのフード市場にも展開していくべきコンセプトではないか。残念ながら大豆や豆製品は、エストロゲンが多くて乳がんの原因になると言う噂が飛び交っているアメリカでは、豆乳はあまり売れてないようだ。もちろんスタバとかに行くとソイラテは結構人気だが、その消費量はたかが知れている。
現在世界中でヴィーガンの人たちが何%くらいいるのか、信頼できるデータは見当たらないけれど、いくつかの調査結果によると、ヴィーガンの人口は世界的にまだまだ増加傾向にある。
例えば、2020年に発表された調査結果によると、米国の成人の約5%がヴィーガンであり、約3%がヴェジタリアンであると報告されている。十分な大きさの市場だ。
ちなみにアメリカでは牛乳離れが起こっていて、人気があるのはアーモンドミルクやカシューミルクである。値段が高いのと味が今ひとつだったところ、3年前にスタートアップ企業が作ったオーツ飲料は、なかなかヒットしていて、Amazonが買収した大手の食料チェーン店、ホールフーズでは、一番目立つシェルフスペースを陣取っている。
その名前は、Oat-Ly。ブランドコンセプトはなかなか斬新で、多くの支持者を集めている。アメリカの人口の1/3が乳糖不耐症であることも関係して、アーモンド、カシューなどの植物ミルクが大いに売れている。
その中でこのような遊び心のあるブランドパーソナリティは、特に都心部で人気を集めている。
ところがこれだけ将来性のある植物ミルクの市場で、Oat-lyのここ1−2年の業績は期待されたほどでもない。株価は下がり気味だし、ちょっと古いけどこんな記事もある。
このような市場に、ここは日本の豆乳メーカーも乗り込んでいって欲しいところ。
キッコーマンといえば、全米ほとんどすべての日本食レストランに普及している醤油ブランド。この販売網を通じて豆乳のバリエーションを普及していけないものか。
あるいは大豆の遺伝子組み換えに敏感なアメリカ人が、日本の豆乳に対して認識を改めるまでに時間と経費がかかるかもしれない。
日本人の健康寿命が長いことは有名で、しかもその食生活を支える柱の一つが豆腐や味噌などの大豆食品。そして日本の伝統あるメーカーが、遺伝子組み換えを真っ向から拒否する確固とした態度を持っていることを示せば、それこそ注目されるだろう。
ここ数年、アメリカのカルナリー界で日本の「抹茶」はキーワードになっていて、それと掛け合わして抹茶ソイラテ路線を広げていくのも面白いかもしれない。例えば抹茶ソイ・パスタ、抹茶ソイ・ラーメン、抹茶ソイ・タジンとか。
抹茶ソイ・おから・カレーなんてのもいい。
タイのグリーンカレーにおからと抹茶と豆乳が入ってるなんて、オシャレだ。
それにしても豆乳のパッケージに、ここまで健康至高に徹するのではなく、もっとおいしさや汎用性を重視していく方が良いような気がする。と言うのは日本人でも、ふた言目には健康と言われることに辟易している人たちが多くいて、そんなもんよりおいしいほうがいい!!という層も増えている。ただ体に悪いものは避けたい、というのは人のツネ。そこにこの豆乳市場のニッチがある。
キッコーマンさん、応援しますね。日本が世界に誇らしめる豆乳をもっと知らしめてほしい。