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総合英語Forest/Evergreen [書評]③:SV単複一致(呼応)

旧名「総合英語Forest」書評の3記事目です。今は「総合英語Evergreen」という書名になって中身も追加されています。先にForestの書評を書いて、後からEvergreenの情報を追加できればと考えています。

総合英語Evergreen
川崎芳人・久保田廣美・高田有現・高橋克美・土屋満明・Guy Fisher・山田光 (著),
墺タカユキ (編集), 鈴木希明 (編集)
株式会いいずな書店
ISBN-10 ‏ : ‎ 4864607214
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4864607216

今回は、私が特に重視している名詞シリーズの番外編で、「名詞(主語)と動詞(述語)の単複一致(呼応)」問題のご紹介です。記事①「名詞」や②「冠詞」とは違い、「名詞(主語)と動詞(述語)の単複一致(呼応)」問題は学校英語での扱いが小さく、Forestでも複数の章にまたがっており、まず問題を認識することすら難しいという側面があります。したがって、認知度も残念ながらやや低め。
 「単数主語に対する述語動詞は単数呼応、複数主語には複数呼応」で全てが済むと思っている人も多いかもしれませんが、そんなに単純なものではありません。Evergreen/Forestでも以下の4つの章に説明が分散されており、まるで正面からこの問題を扱うことを避けているかのような印象を受けます(第2章「動詞と文型」、第18章「名詞」、第21章「形容詞」、第24章「接続詞」)。
 では、英語のSV単複一致(呼応)問題のご説明を兼ねて、Forestを書評していきます。「表現のための実践ロイヤル英文法」でもう少し整理された解説が読めますので、なるべく早くその書評記事も上げて比較してもらえたら幸いです。

以下、Forest原文を引用・要約(簡潔に表現するため多少アレンジしてある場合もあり)して、私からのコメントを入れていきます。著作権を考慮して必要以上の引用は避けておりますので、内容を詳しく知りたい方は原本を直接ご覧ください。

第2章「動詞と文型」
Part 2 理解する

1 動詞の使い方
 ❷ 述語動詞の形:時や主語によって形を変える
   いつのことを表すか、主語の人称は何か、主語は単数か複数か
   現在のことを表し、主語が3人称単数なら、3単現のsをつける

  1. 3単現のs」の補足説明
     do動詞は、3単現のsをつけるか否かが唯一の違い
     be動詞は、人称・時制・単複で複雑に語形変化するので要注意

  2. この段階では、「SV単複一致(呼応)問題」に関する言及はまだありません。

第18章「名詞」
Part 2 理解する
2 名詞の用法
 ❷集合名詞の用法:集合体を指す名詞(ひとまとまり、構成員)
  family, team, club, class, committee, crew, group, staff, audienceなど
  構成員に重点を置く:形は単数でも複数扱い(be動詞がare)
  複数形がない集合名詞:police, cattleは複数扱い(複数形がない)
  peopleは、意味が「人々」なら単数形で複数扱い、「国民・民族」なら普通名詞
4 名詞の複数形
 ❸ 複数形の意味と用法
  ●必ず複数形で用いられる名詞:複数扱い
   contact lenses, trousers, pants, scissors, shoes, socks, gloves
「1つのように見えるものでも、2つの構成要素が組み合わされてできているものは複数形で用いられる。」「これらの名詞はつねに複数扱いされる。」
  ●学問を表す名詞:複数形で単数扱い
   economics, physics, mathematics, politics, linguistics, statistics
  ●金額・距離・時間のまとまり:単数扱い
   One hundred dollars is …
   Twenty miles is …
   Ten years is …
「金額・距離・時間などの表現は、複数形であっても1つのまとまりとみなされ、単数扱いされる場合がある。」

  1. この「集合名詞」と「必ず複数形で用いられる名詞」で、「SV単複一致(呼応)問題」が初めて言及されます。普通の高校生も、集合名詞ではSV単複一致(呼応)問題に触れているはず。

  2. 「学問」「金額・距離・時間」では複数形主語でも単数扱いが原則、が定番説明。さらに深掘りして、時間は例外的に複数扱いと単数扱いの両方ありと説明するのも定番。Forestの「1つのまとまりとみなす」という説明も、やや工夫が見られるものの、ほぼ定番説明。

  3. 私から見ると、「距離・時間」は、科学的に考えて本当に数えるものか否か、日本語で判断して整理・分類することが可能。「金額」も厳密には数えるモノではない、と言われて納得できるかどうか(何かモノを買うときに、"How many ~?"と"How much ~?"では全く違うことを聞く質問になる、といえばお分かりいただけるでしょうか)。「学問」については、また別の説明が必要。

第21章「形容詞」
Part 2 理解する
4 数詞
 ❸ 数詞を使った表現
  ① 数詞+複数名詞
   Five minutes is (X are) …
   Five minutes have (X has) passed … [ひとまとまりとして考えず、1分ごとの経過に焦点を当てている。]
期間・距離・金額などを「〈数詞+複数名詞〉で表し、それをひとまとまりのものとして考える時には単数扱いとなる。」

  1. 「期間・距離・金額」については、上記の第18章「名詞」での説明の繰り返しに加えて、時間を複数扱いにする例外ケースを紹介しています。

  2. 最終的に、"five minutes"を単数扱いにするか複数扱いにするかは、「考え方」次第(いわゆる「ネイティブ感覚」の言い換え)というのも定番説明。ですが、理系人間の私としては納得しがたい説明。

  3. こうした「時間」の整理・分類のやり方は英文法の矛盾の表れ、というのが私の見方。「ネイティブ感覚」という言葉は確かに便利ですが、おかしいことはおかしいと言うことも大事。安易に使うのはいかがなものかと思います。

第24章「接続詞」
Part 2 理解する
Tips for You 17:主語と述語動詞の一致
主語の数に合わせて述語動詞の形を決めるときは、以下の点に注意
① 主語が〈A and B〉のように接続詞andでつながれている場合→複数扱い
 ただし、同一の人物や、まとまった1のものを指す場合→単数扱い
② 主語が〈either A or B〉や〈neither A nor B〉でつながれている場合→動詞はor/norの次の語Bに一致させるのが原則
③ 主語が〈not only A but (also) B〉でつながれている場合→動詞はbutの次の語Bに一致させるのが原則
④ 主語が〈B as well as A〉でつながれている場合→Bに一致させるのが原則

  1. ここで説明されていることは、要はand等の接続詞を使って主語複数個提示された場合に「SV単複一致(呼応)」をどの主語に合わせて行うのか、という文法的な処理方法の問題。

  2. ある意味で誰もが迷って当然(一方で、日本語では発生しない英語特有の問題)。

  3. 私から見ると、コラムで取り扱うのではなく独立した章を立てて扱うべき問題。

このように、Forestでは「SV単複一致(呼応)」問題が4つの章に分散して説明されており、全体像が捉えにくくなっています。また、この問題は英文法の中でも特に説明と整理が難しい項目なので、分からなくて当然です。

今回の書評は以上です。いかがでしたか?総合英語Evergreen/Forestは、学校英語における英文法参考書の最高峰と言っても過言ではない名著。私も個人的にForestの第6版と第7版を合わせて10年以上読み込んで学校英語のプラス面とマイナス面を考察する際の基準にしてきましたので、特別な思い入れがあります。面白いと思った方は、コメントしていただけると、今後の励みになります。

❶最初にご紹介した「表現のための実践ロイヤル英文法は、Evergreen/Forestよりも上のレベルの学習をしたい人向き。英語好きなら読んでおくべき名著。

以下は、総合英語Evergreen/Forest表現のための実践ロイヤル英文法の「名詞」と「冠詞」章の書評です。ご参考にしていただければ幸いです。

以下をクリックして関連記事もご覧ください。学校英語では説明が足りない点を補ってもらうための教材です。


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