Yuya Suga

都内で弁護士をしています。学校における法律問題について、自身の知識の整理のためにnot…

Yuya Suga

都内で弁護士をしています。学校における法律問題について、自身の知識の整理のためにnoteをはじめました。 学校関係者や保護者の皆様と広く意見交換できればうれしいです。

最近の記事

生徒の権利義務に関する法律①/校則

前回から随分時間が空いてしまいましたが、今回は校則に関する法的論点を考えてみたいと思います。 昨今「ブラック校則」の問題が指摘されたり、多くの学校において校則の見直しが進められるなど、校則をめぐる問題は学校法務の中でもホットなトピックの1つとなっています。 このnoteでは「生徒心得」等の名称で明文化され、生徒に周知されているものを「校則」として取り扱います。したがって、教員間で共有されている不文のルールや、校則に基づく個別の指導・処分は対象外とします。 校則の意義と分類

    • 児童福祉①/児童福祉法の全体像

      今回は、児童福祉法(のごく概要)について取り上げます。 学校としても、生徒の虐待が窺われる場合等には児童相談所と適切な連携が求められるほか、生徒が児童福祉法に基づく社会的養護のもとにある場合もありますので、制度の概要を把握しておくことは有意義と思われます。 といいつつ、今回は制度の全体を概観するにとどめ、児童相談所や児童虐待をめぐる問題は別の回で取り上げることにします。 社会的養護については、子ども家庭庁のウェブサイトの冒頭にある「資料集 社会的養育の推進にむけて」に非常に

      • 公教育財政③/公教育財政・学校財務

        公教育財政の最終回として、公教育財政と学校財務を取り上げます。 自治体における学校教育費学校教育費の財源別内訳 以前のnoteで述べたように、自治体の財源には、地方税等の自分で集めた財源のほかに、地方交付税交付金(使途の限定なし)や国庫支出金(使途の限定あり)があります。 例えば川崎市の中学校の場合、学校教育費(川崎市立学校における学校教育活動のために支出した経費)の財源別内訳は下記のとおりとなっています(単位:千円)。 なお、川崎市は政令指定都市なので県費負担教職員制

        • 公教育財政②/教育費の負担

          公教育財政の第2回として、今回は教育費の公費・私費負担を取り上げます。 教育費の状況まず、国の調査をもとに教育費の状況を確認しておきます。 公的負担:教育関係の歳出の状況 教育関係の歳出の状況は、下記の各図に記載のとおりです。 ※ 保険体育費:体育施設の建設・運営や給食等に要する経費   教育総務費:教職員の退職金や私立学校の振興等に要する経費 歳出の10~15%程度が教育費に充てられていること、都道府県レベルでは教育費が最も大きな支出項目となっていること、地方の教

        生徒の権利義務に関する法律①/校則

          公教育財政①/地方財政の一般論

          学校がコンプライアンス上必要となる措置を実施するために、追加の予算が必要となる場合があります(いじめ第三者委員会の設置や、医療的ケア児に対する加配など)。児童・保護者の立場からも、学校にこうした措置を実施するよう求めるにあたって、学校が財務面でどのような状況に置かれているのかを理解しておくことは有用と思われます。 上記のような問題意識のもと、今回から3回にわたって、公教育財政を取り扱います。 なお、第1回目にあたる今回は、地方財政と自治体財務の一般論だけを説明しますので、教育

          公教育財政①/地方財政の一般論

          教育の実施主体に関する法律⑦/教員に関する法律(教員不足と非正規)

          今回は、教員に関する法律の最終回として、教員不足と非正規教員をめぐる問題を取り上げます。 なお、この問題を概観する上では、山崎洋介ほか編『教員不足クライシス』(旬報社、2023)がとても有用です。 教員不足の4段階前掲書第1章〔佐久間亜紀〕によれば、教員不足には以下の4段階があります。 ① 正規教員の欠員 ② ①を補うための常勤の臨時的任用教員の不足 ③ ②の代わりに、常勤的に働く非常勤講師(常勤的非常勤)の不足 ④ ③も見つからないので各学校でカバーを試みるも、対応しきれ

          教育の実施主体に関する法律⑦/教員に関する法律(教員不足と非正規)

          教育の実施主体に関する法律⑥/教員に関する法律(働き方改革)

          今回は、前回の積み残しである、学校における働き方改革を取り上げます。 取り組みの全体像中央教育審議会の答申 教員の多忙に対する個別的な取り組みはそれよりも前からありましたが、「学校における働き方改革」というかたちで包括的な施策が示されたのは、2019年1月25日付中央教育審議会答申です(概要はこちら)。 答申では、以下の5つの施策について提言が行われました。 ①勤務時間管理の徹底と勤務時間・健康管理を意識した働き方の促進  ・ICT等による客観的な勤務時間管理  ・同日

          教育の実施主体に関する法律⑥/教員に関する法律(働き方改革)

          教育の実施主体に関する法律⑤/教員に関する法律(公立学校における働き方)

          今回は、公立学校教員(以下、単に「教員」といいます。)の働き方に関する法律を取り上げます。教員の働き方改革については次回扱います。 なお、制度の概要を把握する上では文科省資料が参考になるほか、高橋哲『聖職と労働のあいだ』(岩波書店、2022)には詳細な分析があります。 給与に関する規律給与条例主義 地方公務員の給与は条例で定められることとなっており、県費負担教職員のそれは都道府県の条例で定められます(地公法24条5項、地教行法42条)。これが議論の出発点となります。 特

          教育の実施主体に関する法律⑤/教員に関する法律(公立学校における働き方)

          教育の実施主体に関する法律④/教員に関する法律(全体像と地公法・教特法)

          これまで3回にわたり、学校に関する法律を取り上げてきましたが、今回からは教員に関する法律を取り扱います。 はじめに:労働者と公務員通常の会社であれば、労働者の地位や権利については、労働基準法をはじめとする各種の労働関連法及びこれに基づく就業規則や雇用契約等が規律していますが、これらの労働関連法と教員との関係はどのように整理されるのでしょうか。 私立の教職員に対しては、通常の会社と同じように労働関連法が全面適用され、所定の就業規則が適用されますが、国立・公立についてはやや複雑

          教育の実施主体に関する法律④/教員に関する法律(全体像と地公法・教特法)

          教育の実施主体に関する法律③/私立学校に関する法律(私学法・私学助成法)

          前回のnoteでは公立学校の組織・運営に関する法律を扱いましたが、今回は私立学校に関する法律を取り上げます。 はじめに私立学校に関して基本となる法律は、私立学校法です。同法は、全67条からなり(※ 2025年4月1日施行予定の令和5年改正により164条に増加。以下、現行規定を前提に記載しますが、ここで取り上げるものは基本的に当該改正の影響を受けません。詳細は後述。)、行政の監督権限に関する規定と、設置者である学校法人に関する規定から主に構成されます。 私立学校法においては

          教育の実施主体に関する法律③/私立学校に関する法律(私学法・私学助成法)

          教育の実施主体に関する法律②/公立学校に関する法律(地教行法)

          前回のnoteで述べたとおり、公立学校の管理は教育委員会が行いますが、これについては地方教育行政の組織及び運営に関する法律(「地教行法」と略します。)が詳しい内容を定めています。 教育委員会とは 教育委員会は、地方公共団体の執行機関の1つであり、都道府県レベルと市町村レベルのそれぞれに存在します。 執行機関とは、議決機関としての議会に対して行政事務を管理執行する機関であって、自ら地方公共団体の意思を決定し外部に表示する権限を有するものを指し、地方公共団体の首長が担うこと

          教育の実施主体に関する法律②/公立学校に関する法律(地教行法)

          教育の実施主体に関する法律①/学校制度全体に関する法律(学校教育法)

          学校を取り巻く法律は、おおまかに次の3つのタイプに分類できます。 教育そのものに関する法律(教育理念や教育権の所在をめぐる議論等) 教育の実施主体に関する法律(学校や教員の組織や地位等に関するもの) 学校のコンプライアンスに関する法律(いじめや体罰等、個別の論点に関するもの) 今回は、2番目の「教育の実施主体に関する法律」のうち、学校教育法について取り上げます。 学校教育法の位置づけ 教育関連の法律は、憲法26条を最上位として、(学校教育を含む)教育全体の理念を

          教育の実施主体に関する法律①/学校制度全体に関する法律(学校教育法)

          自己紹介とnoteをはじめた理由/学校法務について

          見に来てくださってありがとうございます。 弁護士の須賀裕哉と申します。1993年生まれの31歳です。 このnoteでは、私の関心分野である「学校法務」について取り扱いたいと思います。 「学校法務」って? 「学校法務」のイメージをもっていただく上では、次の文章が参考になるかと思います。 ここ十数年でコンプライアンスの重要性は飛躍的に高まりましたが、学校現場もその例外ではありません。いじめや学校事故などの諸課題について適切な対応がなされるよう、様々な法律やガイドラインが策

          自己紹介とnoteをはじめた理由/学校法務について