教育の実施主体に関する法律⑤/教員に関する法律(公立学校における働き方)

今回は、公立学校教員(以下、単に「教員」といいます。)の働き方に関する法律を取り上げます。教員の働き方改革については次回扱います。
なお、制度の概要を把握する上では文科省資料が参考になるほか、高橋哲『聖職と労働のあいだ』(岩波書店、2022)には詳細な分析があります。


給与に関する規律

給与条例主義

地公法第二十四条 (略)
 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。
地教行法第四十二条 県費負担教職員の給与、勤務時間その他の勤務条件については、地方公務員法第二十四条第五項の規定により条例で定めるものとされている事項は、都道府県の条例で定める。
教特法第十三条 公立の小学校等の校長及び教員の給与は、これらの者の職務と責任の特殊性に基づき条例で定めるものとする。
 (略)

地方公務員の給与は条例で定められることとなっており、県費負担教職員のそれは都道府県の条例で定められます(地公法24条5項、地教行法42条)。これが議論の出発点となります。

特別な手当の支給と残業代の不支給

給特法第三条 教育職員(校長、副校長及び教頭を除く。)には、その者の給料月額の百分の四に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない。
 教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。
 (略)
人材確保法第三条 義務教育諸学校の教育職員の給与については、一般の公務員の給与水準に比較して必要な優遇措置が講じられなければならない。

※ 給特法は「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」の、人材確保法は「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法」の略称。

県費負担教職員の給与は都道府県の条例で定めるとはいえ、各都道府県の全くのフリーハンドで決められるわけではありません。

まず、給与水準について。2004年の国立大学法人化以前は、公立学校教員の給与水準は国立学校に準拠することとされており(旧教特法25条の5)、条例で定めるといっても一定の縛りがありましたが、国立学校法人化に伴って当該規定が削除された後も、文科省は各都道府県教育委員会に「現行の教員給与体系の基本は維持されるので,公立学校教員の給与について引き続き必要な水準が保たれるよう留意すること」と求めています。この「求め」に法的拘束力はないとはいえ、事実上従う都道府県が多いと思われます。

次に、教職調整額の支給と残業代の不支給について。給特法3条に定めがありますが、法律は条例に優先するので(地自法14条1項)、各都道府県は、条例で教職調整額の支給と残業代の不支給を定めなければならないことになります。
関連して、義務教育等教員特別手当も併せて紹介しておきます。「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法」(通称「人材確保法」)3条が定める「優遇措置」を具体化するかたちで、各都道府県が条例で当該手当の支給を定めています。法律上は「優遇措置」とあるだけで、義務教育等教員特別手当を支給せよと具体的に定められているわけではないものの、各都道府県において一律にこのような手当が支給されています。

東京都の例

給与条例冒頭 地方公務員法第二十四条第六項【注:5項の誤り?】、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第四十二条及び第五十九条並びに市町村立学校職員給与負担法第三条の規定に基き、この条例を定める。
第三条 給料は、学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例に規定する正規の勤務時間による勤務に対する報酬であつて、この条例に定める管理職手当、初任給調整手当、扶養手当、地域手当、住居手当、通勤手当、単身赴任手当、特殊勤務手当、へき地手当、産業教育手当、定時制通信教育手当、超過勤務手当、休日給、夜勤手当、宿日直手当、管理職員特別勤務手当、期末手当、勤勉手当及び義務教育等教員特別手当を除いたものとする。
第二十四条の三 義務教育諸学校(小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部若しくは中学部をいう。)に勤務する教育職員等には、義務教育等教員特別手当を支給する。
2以降 (略)

東京都・学校職員の給与に関する条例

東京都では、学校職員の給与に関する条例(「給与条例」)が定められています(東京都における教職員の給与制度の概要については都教委ウェブサイト参照)。義務教育等教員特別手当についても当該給与条例で定められています(24条の3)。

給特条例第三条 義務教育諸学校等の教育職員(略)のうちその属する職務の級がこれらの給料表の四級以下である者には、その者の給料月額の百分の四に相当する額の教職調整額を支給する。
2 前項に規定する者のうち、東京都人事委員会の承認を得て東京都教育委員会規則で定める者には、同項の規定にかかわらず、その者の給料月額の百分の四に相当する額の範囲内において人事委員会の承認を得て教育委員会規則で定める額の教職調整額を支給する。
 (略)
 義務教育諸学校等の教育職員(管理職手当を受ける者を除く。)については、給与条例第十七条及び第十八条の規定【注:超過勤務手当、休日給に関する規定】は、適用しない。

東京都・義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例

他方、教職調整額の支給と残業代の不支給については、別の条例(義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例)で定められています。
教職調整額は給料の4%とするのが給特法のデフォルトルールですが、東京都では一定の者について教職調整額を4%未満とする修正が行われています(給特条例3条2項)。給特法の4%はあくまで「基準」なので、例外も可という整理と思われます。

第十五条 教員特殊業務手当は、都立又は公立の学校に勤務する教育職員、実習助手又は寄宿舎指導員が、学校の管理下において行う非常災害時等の緊急業務、修学旅行等若しくは対外運動競技等の引率指導業務又は学校の管理下において行われる部活動の指導業務に従事した場合で、当該業務が心身に著しい負担を与える程度のもの(人事委員会の承認を得て教育委員会規則【注:施行規則別表第一の13で定める程度のものに限る。)であるときに支給する。

東京都・学校職員の特殊勤務手当に関する条例

なお、東京都では、修学旅行や部活動の引率・指導についても、一定の場合に教員特殊業務手当が支払われることになっています。

労働時間に関する規律

教員の労働時間も条例で定められますが(地公法24条5項、地教行法42条)、前回のnoteに記載したとおり、地方公務員については一部規定を除き労働基準法の適用があります。したがって、教員の労働時間は、同法に反しない範囲で条例により定められることになります。

給特法による労働基準法の修正

教員については、地方公務員であることに伴う上記修正に加えて、給特法5条において労働基準法の適用がさらに修正・限定されています。

同条の前半は、教員について1年単位の変形労働時間制を適用可能とするための読み替え(働き方改革に関する令和元年改正で新設)と、教員の臨時の残業(後記の超勤4項目に対応)を可能にするための読み替えです。
労働基準法の読み替え規定である地方公務員法58条3項をさらに読み替えるもので、異常に読みにくい構造となっていますが、最終的に労働基準法は以下のとおり読み替えられます(太字が読み替え部分)。

第三十二条の四 使用者は、次に掲げる事項について条例に特別の定めがある場合は、第三十二条の規定にかかわらず、その条例で第二号の対象期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が四十時間を超えない範囲内において、当該条例(次項の規定による定めをした場合においては、その定めを含む。)で定めるところにより、特定された週において同条第一項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。(略)
 その他文部科学省令で定める事項
 使用者は、前項第四号の区分並びに当該区分による各期間のうち最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間について条例に特別の定めがある場合は、当該各期間の初日の少なくとも三十日前に、文部科学省令で定めるところにより、当該労働日数を超えない範囲内において当該各期間における労働日及び当該総労働時間を超えない範囲内において当該各期間における労働日ごとの労働時間を定めなければならない。
③文部科学大臣は、審議会等(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条に規定する機関をいう。)で政令で定めるものの意見を聴いて、文部科学省令で、対象期間における労働日数の限度並びに一日及び一週間の労働時間の限度並びに対象期間(第一項の条例で特定期間として定められた期間を除く。)及び同項の条例で特定期間として定められた期間における連続して労働させる日数の限度を定めることができる。
第三十三条 (略)
 公務のために臨時の必要がある場合においては、第一項の規定にかかわらず、別表第一第十二号に掲げる事業に従事する国家公務員及び地方公務員については、第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。この場合において、公務員の健康及び福祉を害しないように考慮しなければならない

また、給特法5条の後半は、地方公務員法58条3項による適用除外の範囲の修正です。1年単位の変形労働制(労基法32条の4)を適用可能とし、代わりに残業代の支払義務(労基法37条)を適用除外の対象に追加しています。後者は、前に述べた残業代の不支給に対応するものです。

労働基準法第二条、第十四条第二項及び第三項、第二十四条第一項、第三十二条の三、第三十二条の三の二、第三十二条の四の二、第三十二条の五、第三十七条、第三十八条の二第二項及び第三項、第三十八条の三、第三十八条の四、第三十九条第六項から第八項まで、第四十一条の二、第七十五条から第九十三条まで並びに第百二条の規定(略)は、職員に関して適用しない。(略)

給特法による残業の制限(いわゆる超勤4項目)

給特法第六条 教育職員(管理職手当を受ける者を除く。)を正規の勤務時間(略)を超えて勤務させる場合は、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限るものとする。
 前項の政令を定める場合においては、教育職員の健康と福祉を害することとならないよう勤務の実情について十分な配慮がされなければならない。
 (略)

給特法第六条第一項(略)の政令で定める基準は、次のとおりとする。
 教育職員については、正規の勤務時間の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務(略)を命じないものとすること。
 教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合は、次に掲げる業務に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限るものとすること。
 校外実習その他生徒の実習に関する業務
 修学旅行その他学校の行事に関する業務
 職員会議に関する業務
 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務

公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて
勤務させる場合等の基準を定める政令

法律上、管理職以外の教員は、次の4つの業務のためにやむを得ず必要となる場合を除き、残業を命じられないことになっています(給特法6条1項)。4つの業務とは、①実習、②学校行事、③職員会議、④その他の緊急事態を指します。この基準をふまえ、各都道府県が条例を定めることになります(以下は東京都の例)。

給特条例第五条 義務教育諸学校等の教育職員については、原則として、超過勤務(略)及び休日勤務(略)はさせないものとする。
 義務教育諸学校等の教育職員に対し超過勤務及び休日勤務をさせる場合は、次に掲げる業務に従事する場合で、臨時又は緊急にやむを得ない必要があるときに限るものとする。
 一 生徒の実習に関する業務
 二 学校行事に関する業務
 三 教職員会議に関する業務
 四 非常災害等やむを得ない場合に必要な業務

東京都・義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例

しかし、給特法をめぐっては、実際にはこの4項目以外にも残業を命じられているのではないかという問題が提起されています。
残業が明示又は黙示に命じられているのであれば、端的に給特法及びこれに基づく条例違反になると考えられます(下記参照)。

「下級審裁判例の中には…給特法等が時間外勤務を原則として禁止しそれを命じ得る場合を限定した趣旨を没却するような事情が認められる場合には時間外勤務手当請求権が発生するとの一般論を述べるものがあった」「原判決の理由のうち各校長に(給特法等に反する)違法な行為があったとまではいえないとした部分には、上記のような一般論を述べる下級審裁判例の影響がみられるようである。しかし、給特法等は教育職員に原則として時間外勤務をさせないとするとともにこれを命ずることができる場合を限定列挙しているのであるから、給特法等の違反が問題となる事案においてはこれらの規定に反する時間外勤務命令が(黙示を含めて)発せられたか否かのみを検討すれば足りるはずであり、原判決の判旨には混乱がある。」

判例タイムズ1257号72頁の匿名コメント(最高裁平成23年7月12日集民 237号179頁)

なお、裁判例においては、校長には「原告の労働時間を正確に把握し,原告が勤務時間外に業務に従事せざるを得ない状況が存在する場合には,業務量の調整や業務の割振り,勤務時間等の調整を行うことなどによって,労基法32条の定める法定労働時間を超えて原告を労働させてはならない職務上の注意義務」があるとして、当該注意義務違反をもって国家賠償法上の違法として、残業代相当額の損害賠償請求がなされたものもあります(東京高判令和4年8月25日。ただし、残業代支給に係る裁判例の一部と同様に、給特法の趣旨を没却する場合のみ違法との結論が示されている。)。

逆に、残業を命じられているわけではない、言い換えると、使用者の指揮命令を受けずに自主的に4項目以外の業務を行っている(したがって、労働基準法上の「労働時間」にもあたらない)ということであれば、超過勤務を「させた」ことにはならず、給特法及びこれに基づく条例には違反しないことになります。

最高裁平成23年7月12日集民 237号179頁は、校長が時間外勤務を具体的に命じたり、学級の運営等を含めて個別の事柄について具体的な指示をしたこともなかったことを理由に、当該事案において時間外労働命令はなく、自主的な業務への従事であったとして、校長に給特法及びこれに基づく条例への違反はなかったと判断していますが、これも同様の論理です。
ただし、教員の残業を「労働時間」にあたらない自主的活動とする見方に対しては、それが「労働時間」の意義に関する判例・学説と大きく乖離していることを理由として、反対する見解が大多数ではないかと思います(以下など)。

「本件で問題となっているXらの活動は、その内容を見る限り、少なくともその大部分が、生徒指導等を含めた教育活動又は学校運営活動そのものか、あるいはその一部をなすといいうる程度にこれらに密接に関連した活動に該当するものとして、教員の本務に属する活動といいうると考えられる。そして、所定労働時間外に行われる労働者の本務活動については、使用者による黙認ないし認容があれば、使用者による黙示の指揮監督があるというか、他の理由付けによるか等はともかく、その時間につき労基法上の労働時間性が肯定されるという点には、ほぼ一致した支持があるといえるであろう」「以上の見地に立つと、本件では、判旨にいう個別の事柄についての具体的指示より弱い、学校長による黙認ないし容認といいうる程度の関与が認められる場合にも、Xらを違法に「勤務をさせ」たというべき場合があるということになる」

川田琢之「判批」ジュリスト1437号108頁(2012)

給特法に違反して4項目以外の残業が命じられた場合の残業代支給の有無については、①給特法5条が残業代支給の根拠規定である労働基準法37条を明示的にに排除している以上、当該残業について残業代は支払われないとする裁判例(東京高判令和4年8月25日など)と、②一定の場合(※)には例外を認める裁判例(札幌高判平成19年9月27日など)があります。

(※)「時間外勤務等を行うに至った事情,従事した職務の内容,勤務の実情等に照らし,時間外勤務等を命じられたと同視できるほど当該教育職員の自由意思を極めて強く拘束するような形態で時間外勤務等がなされ,そのような時間外勤務等が常態化しているなど,給特法,給特条例が時間外勤務等を命じ得る場合を限定した趣旨を没却するような事情が認められる場合」(前掲・札幌高裁)

文科省の解釈

「給特法の仕組みにより、所定の勤務時間外に行われる「超勤4項目」以外の業務は教師が自らの判断で自発的に業務を行っているものと整理されます」(5頁)
「教師に関しては、校務であったとしても、使用者からの指示に基づかず、所定の勤務時間外にいわゆる「超勤4項目」に該当するもの以外の業務を教師の自発的な判断により行った時間は、労働基準法上の「労働時間」には含まれないものと考えられます。」(8頁)

公立学校の教育職員の業務量の適切な管理…指針に係るQ&A(令和3年6月時点)

文科省が公表している上記資料によれば、超勤4項目以外の業務はすべて教師が自主的に行っていることになり、その結果、これらの業務を行った時間は労働基準法上の労働時間にはあたらず、給特法違反もないということになります。

上記で引用した学説の批判にある通り、教員が所定労働時間外に校務を行っており、校長もそれを黙認又は認容しているのであれば、むしろ原則として労働基準法上の労働時間にあたる(教員の職務の特性にも鑑みて、真に自主的活動といえるような場合にのみ、例外的に労働時間性を否定する)と考えるのが自然ではないかと思いますが、実務はそうなっていないということです。

ただし、文科省においても、このような解釈と労働基準法の考え方の間にずれがあることは認識されています(以下参照)。ずれがあるとしても、超勤4項目以外の業務についても一律に残業代を支給するよう直ちに転換することが現実的でない以上、現時点では上記の解釈を維持した上で、給特法のさらなる改正を含め、これから時間をかけて望ましい制度設計を検討するという姿勢と解されます。

「所定の勤務時間後に採点や生徒への進路指導などを行った時間が勤務時間に該当しないという給特法の仕組みは、労働基準法の考え方とはずれがあると認識されていることも御指摘のとおりだと思います。」

令和元年12月3日 参・文教科学委員会 萩生田文部科学大臣

労働安全との関係

上記のとおり、残業代請求の文脈では、超勤4項目以外の残業は原則として自主的な活動とするのが裁判例の傾向ですが、公務災害の文脈では、「自主的活動」論にとらわれず、勤務の実態に即した判断がなされる傾向があります。下記の裁判例では、その旨が明確に表れています。

被告は、教育職員の勤務は、本質的には「自主性、自発性、創造性」を有しており、特に公立学校の教育職員については、時間外勤務を命じることができる場合は、(略)「超勤4項目」に限られるところ、原告の時間外勤務は、少なくともE校長からの時間外勤務命令に基づくものではなく、労働基準法上の労働時間と同視することはできないから、本件時間外勤務時間をもって業務の量的過重性を評価するのは相当でない旨主張する。
 (略)上記適正把握要綱【注:大阪府が定める「勤務時間の適正な把握のための手続等に関する要綱」】の内容に加えて、本件ガイドライン【注:「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」。詳細は次回のnote参照】が発出された趣旨や、その背景にある考え方をみても、本件高校において、勤務時間管理者である校長が、教育職員の業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積してその心身の健康を損なうことがないよう注意する義務(安全配慮義務)の履行の判断に際しては、本件時間外勤務時間【注:在校時間及び休日校外で部活動指導等の業務に従事した時間を基準に算定】をもって業務の量的過重性を評価するのが相当であり、本件時間外勤務時間が、校長による時間外勤務命令に基づくものではなく、労働基準法上の労働時間と同視することができないことをもって、左右されるものではないというべきである。

大阪地判令和4年6月28日労働経済判例速報2500号3頁

その結果、校長は、各教員の実質的な労働時間の状況を把握するとともに、それが生命や健康を害するような状態であることを認識、予見し得た場合には、事務の分配等を適正にするなどして勤務により健康を害することがないよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負うことになります。また、本判決によれば、このような義務の履行として、声掛けや面談、アドバイス等では足りず、業務負担を実際に軽減させるための具体的な措置を講じる必要があるとされています。
なお、同裁判例については、野村春歌「判批」労働法律旬報2044号22頁に詳細な分析があります。

教員の働き方改革

文科省の解釈によれば、教員の残業はあくまでも自主的な活動なので、何も問題はないということになりそうですが、現実問題として教員の多忙は大きな社会問題となっていることから、令和元年に教員の働き方改革に関する各種施策が公表されました。

今回のnoteはすでに長文となってしまったので、これについては次回取り上げます。

給特法の適用範囲

第二条 この法律において、「義務教育諸学校等」とは、学校教育法に規定する公立の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校又は幼稚園をいう。
 この法律において、「教育職員」とは、義務教育諸学校等の校長(園長を含む。)、副校長(副園長を含む。)、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、養護助教諭、講師(常時勤務の者及び地方公務員法第二十二条の四第一項に規定する短時間勤務の職を占める者に限る。)、実習助手及び寄宿舎指導員をいう。

最後に、給特法の適用範囲を確認しておきます。
留意すべきは、近年増加していると言われる非常勤講師が本法律の適用対象となっていないことです(上記太字部分)。その結果、非常勤講師には原則どおり残業代が支払われることになります。非常勤講師の増加も問題視されていますが、これについては、別の回で取り扱う予定です。


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