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超・短編小説集

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500字と800字の超短編小説を基本的に… いろんな名前で書きました(そして忘れました)てのひら怪談やみちのく怪談に投稿したものもあります。
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#超短編小説

この夜でなければ

 激しい雨が降る。そんな夜がある。斜めになって細く。針のように。  鳥も虫もそれぞれの厚…

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あかりを、つけないで。

午前二時のロビーに集ふ六人の五人に影が無かつた話/石川美南 「あかりを、つけないで」  …

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ひとむくどり

 ちょうど目的地手前の電線に黒い血と膿の充実したイボに似たかたまりが寄り添って並んでいる…

かばん

 表でかそけき音がして、なじみの野良猫だろうと玄関を開けたらカッパがいた。こうらをこちら…

3

それは心音ではない、電車の音だ。

 あたたかい闇が揺れる、ゼリーのように凝っている。一定のリズム。  エネルギーが送り込ま…

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接触

 もう握手やめよっか、とみざおりちゃんが言った。他の人とはしているのにって思ったけど、特…

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恐山48

 なんか呪術っぽいんですよね、動きが。というのが、わたしたちのダンスチームへのコメントでした。  その場ではなんとか持ちこたえましたが、会場を出るとすぐに副部長のすすり泣きが漏れ、原ちゃんのギャグはすべり、みんな項垂れてしまいました。大会で最下位になった上に、この評価。 「ねえ、いっそ呪術っぽさを極めたらいいんじゃない?」  重苦しい空気しかない帰りのバスで、浅井部長が立ち上がりました。 「シャーマンなんてある意味ダンサーよ、表現のきわみよ」 「よし、今日からアイテ