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超・短編小説集

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500字と800字の超短編小説を基本的に… いろんな名前で書きました(そして忘れました)てのひら怪談やみちのく怪談に投稿したものもあります。
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2019年8月の記事一覧

夜明け

 コットンにのせた化粧水を頬から迎えに行き、優しく置く。右頬からはじめて左頬、鼻筋、額。…

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この夜でなければ

 激しい雨が降る。そんな夜がある。斜めになって細く。針のように。  鳥も虫もそれぞれの厚…

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あかりを、つけないで。

午前二時のロビーに集ふ六人の五人に影が無かつた話/石川美南 「あかりを、つけないで」  …

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ひとむくどり

 ちょうど目的地手前の電線に黒い血と膿の充実したイボに似たかたまりが寄り添って並んでいる…

かばん

 表でかそけき音がして、なじみの野良猫だろうと玄関を開けたらカッパがいた。こうらをこちら…

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それは心音ではない、電車の音だ。

 あたたかい闇が揺れる、ゼリーのように凝っている。一定のリズム。  エネルギーが送り込ま…

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接触

 もう握手やめよっか、とみざおりちゃんが言った。他の人とはしているのにって思ったけど、特別扱い感じたことも確か。おれたちはいつも手の甲でぽんぽんとお互い励まし合った。正直、羨ましがってるオタもいたしね。  騙されてるって思わないようにしてたかな。  ある日彼女がおれの袖にメモ用紙を滑り込ませてきた。そういうアイドルがいるとは聞いたことはあったけどまさかね。怒りと喜びで混乱しながらトイレで開いたけど、あったのは電話番号じゃなくて彼女の秘密だった。  霊みたいなものが見える

恐山48

 なんか呪術っぽいんですよね、動きが。というのが、わたしたちのダンスチームへのコメントで…

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