冬眠をし忘れた熊は耳を奪わない(小笠原博毅)
冬至の夜に奪われたのが仮面だけでよかった。耳を取られはしなかったからだ。
でもそれは、やってきたのが熊男だったからで、もしも熊だったら耳を持っていかれていたかもしれない。琵琶弾きの芳一のように。なぜなら、熊は余計なお節介をするものだから、仮面の両脇から覗いている奇妙な部位は余計なものだと思い込んでしまうかもしれないから。ラ・フォンテーヌの熊はそんなやつだった。友だちのおじいさんにまとわりつく一匹のハエを追っ払おうとして、そこにあったレンガを投げてしまう熊。レンガはおじいさん