【連載】大阿久佳乃が翻訳するアメリカ現代詩 #3 (フランク・オハラ『ランチ・ポエムズ』)
2023年にアメリカ文学エッセイ集『じたばたするもの』(サウダージ・ブックス)を刊行した文筆家の大阿久佳乃さん。同書で取り上げた詩人たちの作品を、大阿久さんの翻訳でお届けします。
オハラ・モノガタリから2篇の詩
フランク・オハラ
大阿久佳乃 訳
1
僕の愛はグラスにいれられてやって来る
ブルボン家の血
サクソフォンかコルネット
どこだっていい
ケンタッキー州の緑のガラスの花
そしていつも同じハンカチが
ダマスクの同じ鼻に
豪奢な襟を立て
スカーフを僕の首に投げかけ
京都のボードレールの終わりなき純粋さ
奴の頭にはヒビでも入ってるのか?
2
筋肉の疲れる下駄を履いて
神社への長い旅をしたあと
茶は苦く胸は硬く
一晩には多すぎるテラス
もはや海は無い
竹馬の下に海は見えない
僕が突き進むと
手は足首に 脚は手首に
裸の考え
ものすごく薄いストッキングでできた鞭みたいな
ラジオがついてて 煙草の煙を吐き出して
沼を転がる快感が
天の川を呼ぶ奴もいる
木立の上の奇想天外な西洋の地で
そこは愉快な頭骸骨たちが住むところ
(1954)
訳者コメント
日本に来た事はないものの、日系アメリカ人アーティストと親交があったことがたびたび詩からうかがえるオハラ。「1」に京都という地名が出てくるけれど、タイトルの Ohara が大原をさすのかは不明。
大阿久佳乃(おおあく・よしの)
2000年、三重県鈴鹿市生まれ。文筆家。2017年より詩に関するフリーペーパー『詩ぃちゃん』(不定期)を発行。著書に『のどがかわいた』(岬書店)『じたばたするもの』(サウダージ・ブックス)、月刊『パンの耳』1〜10号、『パイナップル・シューズ』1号など。
https://saudadebooks.thebase.in/items/71651397