サインバルタとストラテラの違いについて
今回は抗うつ薬SNRIの一種であるサインバルタ(デュロキセチン)とADHD治療薬のストラテラ(アトモキセチン)の違いについて書いていきたいと思う。一見するとこれらの薬は適応となる疾患が違うので、全く違う薬なのではないかと思われるが、実は脳内の神経伝達物質に働きかける作用がかなりにている薬なのだ。
Ki値という神経伝達物質の再取り込み阻害作用を比較する。この数値が低いほど各神経伝達物質への効果が高いことを示している。上の比較画像を見てみると、サインバルタはセロトニンに対する効果がストラテラよりも40倍以上強いことが窺える。セロトニンは抗うつ効果が期待されるわけなので、うつ病への治療にはやはりサインバルタの方が良いだろう。
しかし、ノルアドレナリンへの効果はストラテラの方が5倍強いことがわかる。ADHDの実行機能の低さにはノルアドレナリンやドーパミンの脳内濃度の低さが関係していると言われているので、ADHD治療にはストラテラの方が良いことがわかる。ここまでは日本国内で適応となっている通りの結果となっている。
実際に服用してみた結果
私は以前のnote記事で、パニック障害後の軽いうつ病治療にサインバルタを使用していることを書いた。実際、サインバルタは気持ちの落ち込みに劇的に効いたし、不安もかなりなくなった。しかし、副作用として服用直後の眠気が気になっていた。私は毎日10時ごろに起床して薬を飲むのだが、サインバルタを飲んでから眠気がきて、午前中を台無しにしてしまうことがよくあった。
そんなタイミングで、精神科の主治医からADHD治療の一環としてストラテラの服用を勧められた。私はサインバルタは個人輸入で飲んでいたこともあって、サインバルタの服用は一旦やめて、ストラテラ40mgだけを朝に服用するようになった。するとどうだろう。朝の眠気がかなり減ったのである。おそらくだが、これはセロトニンへの効果の違いだろうと考察される。セロトニンは安心をもたらす神経伝達物質なので、眠気が来る場合も多いという。先ほども書いたが、ストラテラはサインバルタと比べて、セロトニンへの効果が40倍ほど弱い。だからサインバルタのセロトニン効果で出ていた眠気がなくなったのだろうと思われる。
ストラテラによるワーキングメモリの改善
さらにストラテラの効果は他にもある。それは次々にやるべきことをこなせるようになるということだ。例えば自分であれば部屋の掃除や家事をこなすことが今まで難しかった。おそらくADHDの症状なのだろうが、一人暮らしをしていたときはほとんど家事ができないので部屋がとっ散らかって、親に定期的にアパートに来てもらって掃除をしてもらっていたほどだった。
ちなみにこの症状は掃除自体のやり方がわからないということではない。ただ単に掃除をやる気になれないということだ。しかし、ストラテラを飲んでからは頭がすっきりとして掃除だったりいわゆる「やるべきこと」をどんどんこなせるようになった。
今まではやるべきことがあっても頭の中にそれらが思い浮かぶことすらなかった。しかし、ストラテラを飲み始めてから「やるべきこと」が頭の中に思い浮かぶようになって優先順位をつけてそれらをこなせるようになった。まるで脳内のメモリが増えているようだ。
それに伴ってマルチタスクも容易になったように感じられる。以前まではアルバイト先なので複数の指示を出されると2つ目以降の指示を忘れてしまったりして、まるで「鶏は3歩歩けば忘れる」状態であった。それが改善された。複数のことを脳内に維持できるようになった。これはおそらく脳内のワーキングメモリが上がっているのだろう。今IQテストを受けたらもしかしたらワーキングメモリの数値だけ上がっているのかもしれない。
サインバルタの方が優れているところ
ここまではストラテラの優れているところを書いたが、サインバルタの方が優れているところもある。それはセロトニンが増えることでストレス耐性が高くなる点だ。セロトニンが増えることで、いい意味で頭がぼんやりする。人生の中では嫌なことをやらなければいけない場面も大いにあるわけだが、そんな場面では脳がぼんやりとするサインバルタの方が良い。ただ単に作業効率を上げたい場面ではストラテラの方が良いが、嫌々やらされる作業が多い人で、ストレスが多い人にはサインバルタの方が合っていることになる。また将来的な不安がある場面でもセロトニン値が高い方が快適に人生を送れる。目の前に迫った緊急の不安についてはベンゾジアゼピン系の抗不安薬がきくが、将来的な漠然とした不安にはセロトニン作動薬が効くことがわかっている。