食べきれなかったそうめんは、NEW麺となる。
そうめんの美味しい季節がやってきた。
冷麦でも稲庭うどんでもなくて、素麺。そっけない感じがする素朴な麺。
私はそうめんをゆがくとなったら大量にゆがく。残るかもしれないなんてことを心配することなく、思いっきりゆがく。
そろそろそうめんが美味しい季節だよねって私の口からぽろりとこぼれたのは、そう、暑い日だった。梅雨の始まる少し前か梅雨が始まってすぐ。今年は梅雨入りがめっぽう遅い。その上、梅雨明けが予想以上に早いっていう噂。梅雨が短いのはありがたいけど、昨年のような猛暑猛暑はつらいなぁと思うし、水不足になっても困るから、降るべき量はしっかり降ってほしいと思ったりもする。
その日は、12束ゆがいた。6束入りのそうめんを2袋分たっぷり。
鍋でグラグラそうめんをゆがいている私に向かって夫が言う。
「そんなに食べれんやろ」
「いいと。食べんでも。冷凍するけん」
食べきれなかったそうめんを一回分ずつラップして冷凍する。冷凍されたそうめんは次の出番をじっと冷凍庫で待つことになった。
それはもちろんNEW麺に生まれ変わるためだ。
何も食べるものがない朝や何も食べるものがない昼。私は眠りについた素麺をそっと優しく起こす。静かに戸を開けて、そっと手のひらに乗せる。そして電子レンジの中にそっと置いて、マイクロウエーブを浴びせるのだ。ゆるゆると解凍されたそうめんを、顆粒だしとめんつゆと醤油で適当に味付けした出汁に放り込む。放り込まれたそうめんは、しっかりと解けていき、そして、温められた出汁の中をリズムよくダンスする。そこにぬぁまぁたぁまぁごぅ(生卵 ※志村けんと研ナオコのコントの時の生卵で再生をお願いします。赤マムシと同じ発音です)を落として、半熟になるまでグラグラと煮た。
私は温まった素麺とだし汁を丼に入れて、上からネギをたっぷりとかける。ついでにとろろ昆布や一味唐辛子も入れる。さっきまで質素だったそうめんが急に華やかになった。これぞ、にゅうめんである。
暖かいそうめんをずるずると啜ると、だし汁がしっかりとそうめんに絡みついて口の中に入ってくる。柔らかくなった麺は、冷たい素麺とは一味違っていてじんわりと体に染みていく。出汁の美味しい旨みが舌の上でころころと転がって、私を楽しませてくれる。とろろ昆布と絡み合いながら、どうにも蕩けそうなほどセクシーに揺れる腰のないそうめんの腰つきに、私は高揚する。にゅうめんは私の癒しだ。
ほぅと一息ついたら、丼に口をつけ、残った出汁を飲み干す。たくさん湯掻いたと思っていたそうめんはNEW麺に生まれ変わるとあっという間になくなった。また湯掻こう。ぐらぐらと沸き立つ湯に、そうめんをぶちこもう。あのよく分からないそうめんを束ねている紙を剥がすのが苦手だけど、がんばって湯掻こう。冷たくても温かくてもおいしいそうめんを食べるために。