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シフォンケーキを焼いたらおばあちゃんの初体験になった話

ある平和な休日、朝からシフォンケーキを作った。

御年90歳になるおばあちゃん(義祖母)の家に行くので、その手土産だ。


シフォンケーキ自体は何度も作ったことがあるけれど、今日は紅茶とレモンのシフォンケーキ。初めて作るフレーバーだ。


人にあげるものやおもてなしの料理に限って、なぜ慣れないレシピを引っ張り出してしまうのか…


しかも、家を出るギリギリに作り始めたもんだから、ボサボサ頭でパジャマのまんまで台所に立った。


レモンの皮を擦りおろしたり、紅茶葉を細かくしたり。やることは沢山あるけど、朝早くて頭がぼんやりするので、どうしてもコーヒーに手が伸びる。コーヒーを飲む余裕があるならもう少し急げよ。笑

写真撮る余裕ある?



オーブンに生地を突っ込んだら、休む間もなく洗い物とアイシングの準備する。


アイシングとは…
粉砂糖に水分を加えて練ってペースト状にしたもの。ミニスナックゴールドの白い甘いやつ、といえばわかりやすいだろうか。

この白いのがアイシング



たっぷりアイシングをかけて、レモンとセルフィーユ、アラザンで飾ってみた。急いだから雑な仕上がりだけどしょうがない。


完成したのは出発の10分前。
やれやれ。




おばあちゃんの家に到着して、みんなでワイワイご飯を食べる。



血が繋がってないけれど、わたしはこのおばあちゃんが大好きだ。

おばあちゃんは子どもを大学に行かせるために一念発起して喫茶店を開き、夜はスナックも営業した。スナックはコロナの煽りを受けるまで、なんと87歳になるまで続けたのだ。

こんだけでもスーパーおばあちゃんなんだけど、おばあちゃんがすごいのは今でも見た目がかなり若いことだ。

ぱっと見70代くらいに見える。


若さの秘訣は《見た目を気にすること》で、数年前に入院したときは「ウィッグを忘れたから家から持ってきて!」と訴えていた。入院した時ですら外見に気を遣えるなんてすごいな、と普段からズボラな私は思ったものだ。


そんなおばあちゃんだけど、最近は自分でも衰えを感じているらしい。

「80代の頃に比べると、老けたなって思うのよ〜」

30代の私からしたら、80も90も一緒ちゃうんか?笑 と思うけど、どうやら80代と90代の間には、20代ー30代と同じくらいの深淵な溝があるらしい。


確かに前と比べておばあちゃんの食欲は落ちた。
持ってきた天丼にほとんど手をつけてない。


これではシフォンケーキもあまり食べてもらえないかもな〜、なんて思っていたら、お姑さんがケーキ用のろうそくを取り出して言った。


「ろうそくが余ってたから、少し早いけどお祝いしよう!ろうそくは5本しかないから、1本で20歳分ね!」 


急遽、おばあちゃんのバースデーを祝う即席誕生日会が始まったのである。

ろうそくに火をつけて、みんなでハッピーバースデーの歌を歌う。


実はおばあちゃんは今まで自分の誕生日をケーキで祝ったことがなかったらしい。90歳にしておばあちゃんの初体験だ!


おばあちゃんは嬉しそうにろうそくの火を消した。そして、美味しいねえと何度も言いながらケーキを食べてくれたので私もすごく嬉しくなった。



私にとってお菓子作りはほとんど自己満足だ。自分の作りたいものを作れば、人から喜んでもらえるかは二の次だった。
けど、こんなに喜んでもらえると、もうこれは麻薬並みの快感だろう。


あらためて思う。
お菓子作りは楽しい!



ちなみに、その日もおばあちゃんはウィッグをつけて口紅をひいて、とても綺麗にしていた。


対して、急いでいたとはいえ化粧もほとんどせず、なんなら少し寝癖が残っていた私よ…




若さの秘訣はいかなる時も見た目を気にすること!


心に刻みたいと思う。










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