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チチ離れを始めた長男との正月山行 奥日光太郎山③

学習院大学山岳部 昭和30年卒 石川貞昭

 沢に入るとすぐに水場が現れ、年末の時ならぬ雨のためか、流水こんこんたる状況である。 酔い覚めの喉には甘露だった。

 ハガタテ薙は、岩石土砂の崩壊の進む険悪な谷で、積雪の上に落石群が不気味な生々しい跡を見せている。 硬い雪の上でステップを繰り返しているうちに、丸みのある山王帽子山の山頂が、目線の高さに迫ってくる。 息子たちが昨日登った光徳小屋の裏山、通称『デベソ』の小さな岩塊は、遥か下に望まれる。 小さな山だが、急斜面の雪と岩塊の上に積もった少ない雪の足場の悪さは、この太郎山の登りの比ではないと懐かしげに2人は述懐している。

 その奥手には、このあたりの視界の中では、飛び抜けて白い前白根山の山稜と、奥白根山の白銀の砦が堂々と眺められる。 さすがに北関東第一の風貌だ。

 太郎山の山稜の一角には、予定通り2時間で到達した。 ここはハガタテのコル(鞍部)よりかなり上部である。

 汗もかかないし、腹も減らない、余裕のある登高であり、2人の高校生は山岳部での重い荷を担ぎ、前の人の足しか見えない山行とはえらい違いだと、この個人山行の良さを話し合っている。

 巨大な針葉樹林帯に包まれた、小太郎山の肩の登りは、積雪はことのほか少なくて、凍結している。 アイゼンは必要とは言えないが、キャラバンシューズの2人には滑らないように、踏まれていない雪の上を歩いてもらう。 木の間越しに、尾瀬の名峰の燧ヶ岳が双頭のピークをもたげて、白く彼方に見える。

 登山路の木の根に付着する、小さなつららを折ってジュースの中に浮かせて、スナック休憩を取る。 足元に広がる戦場ヶ原は、冬枯れのこげ茶色。 しかし私たちが登っている2000メートルを超えた山上は、積雪量は30センチほどだが、完全な冬山の世界なのである。 わずかな標高差でも、このように環境の変化があることは、若い2人にとって良い勉強になったと思う。

 視界を遮るもの何一つない、小太郎山の山頂に立ったのは午後1時半だった。 男体山の巨体。大真名子山、鋭いピークの女峰山、いずれも黒々とした山肌に、幾筋かの白い薙が走るだけの、冬とは思われない景観が広がっていた。

(1978年1月の山行)


通常の奥日光の山々は冬も晴天率が高いです。



降雪直後のラッセルも楽しいです。





コントラストが素晴らしいです。



晴天率が高いので、こんなコントラストに会えます。


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