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チチ離れを始めた長男との正月山行 奥日光太郎山②

学習院大学山岳部 昭和30年卒 石川貞昭

 私は、元旦上野発8時半の鈍行電車で日光へ向かった。 がら空きの車内のうえ、終着駅ではスキーや山に行く人影をほとんど見ない、暖冬異変だった。

 いろは坂にも、中禅寺湖畔にも、雪の気配は全くうかがえない晩秋の枯葉の山だ。 しかし海抜1500メートルの戦場ヶ原の、人の通らない遊歩道は残雪が見られ、車の轍は川となり、所々でたまり水が道幅いっぱいに溢れている、珍しい元旦の大地を踏んで光徳小屋へと進む。

 シラカバ林の奥にたたずむ光徳小屋は、雪を載せていない屋根から、ストーブの煙だけ白々と枯れ木に包まれた山間に立ちのぼらせていた。 この山中に25年も小屋番として生活する奥山文雄さんを訪ね、顔見知りの訪問者たちとともに、新春の盃を酌を交わす。

 前日到着している息子たちは、予定通りに夕食の準備をしていた。 私は結局、奥山さんや知人達と6時間以上も、炉端酒をやってしまい、元旦の夜のふけるのも忘れていた。

 2日。 無風快晴。 まばゆい朝の光が目に染みた。起床8時。 起きているのは太郎山に登ろうとする息子たちだけだ。

 私は文字通りの『二日酔い』である。 準備を整えて光徳小屋を出たのは10時だった。 光徳小屋から光徳牧場への道は下り坂だが、これでヒョロヒョロするので、先はどうなるやら。 2人の高校生は足取りも軽やかに、明るい残雪の林間をサクサクと進んで行く。 すぐに距離をあけられる。 山王峠へ登る林道から、太郎山登山道は故矢島市郎氏の句碑のところから右に分かれる。

「白樺は月が夜来て晒すらし 三嵩史」

矢島市郎氏の句碑から

 メモに書きとめていると、もうへばって動けないの?とやられる。 本音はそうかもしれないが、山登りでは記録や取材が大切だとやり返して、立ち上がる。 二日酔い、歩き始めの30分は相当こたえるものだ。

 山王帽子山と太郎山が大写しに仰げる平坦地に、冬用テントが1張り合った。 声をかけたが既にもぬけのカラ。 わきにウイスキーや清酒の空瓶が転がっていた。 このパーティーも昨夜はやりましたね!と妙なところで意を強くさせられる。

 雪が少ない上に、この人たちの踏み跡も完全なため、あのいやらしいハガタテ薙のガレ場がまったく苦にならないルートとなっていたのである。

(1978年1月の山行)


光徳牧場周辺の木々


水しぶきも凍り付いていた。


これは、光徳牧場周辺からの大真名子山・小真名子山


寒さで流れは凍る。


戦場ヶ原からの男体山


「チチ離れを始めた長男との正月山行 奥日光太郎山①」から


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