「短編小説」聖母マリアは死なない 2
担当の部屋を全て整備し終わると、実花は私服に着替えるためにロッカールームに向かった。
「お疲れ様です」
「お疲れ様〜」
次々とノルマを終えた同僚達が帰って来る。
派遣のパート社員ばかりのこの仕事の平均年齢は高い。現役を退いて年金だけでは暮らせない女性が殆どだ。連れ合いを亡くしたり、離婚経験者だったり、それなりの苦労を背負った人達が、表は華やかなホテルの裏方作業をひっそりと背負っている
皆、それぞれに心に傷を持つ者達はお互いのプライベートを深く詮索しない。
実花は友人を作る気は