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2021.10.23 霜始降(しもはじめてふる)あんまんと主菓子とわたしのだんまり戦闘劇。
今週はぐっと冷え込んで、いそいそとアウターを取り出してきてみたりマフラーを巻いてみたりといかにも「冬の訪れ」を感じさせるような一週間だった。
季節の移り変わりの指標を示す二十四節気では霜降(そうこう)、さらにそれを初候・次候・末候と分けた七十二候では初候にあたる霜始降(しもはじめてふる)と、もう霜が振り始める頃。霜って氷の結晶だもんね。そりゃあ、肌寒く感じるわけだよ。
お茶のお稽古に行く日は、決まって先生がお昼ご飯を用意していてくれる。豪華に天丼とか唐揚げなんかを揚げてくれることも多い。一人暮らしでは揚げ物なんて滅多にしないし、先生と一緒に準備をしたり揚げ物をしたりすることで作り方をなんとなく知っているお料理のレパートリーが増えていくのもまた嬉しい。
ここ最近は、来週から始まる怒涛のお茶会ラッシュに先生は大忙し。といってもこんなご時世だから、社中を5人ずつのグループに分けて3回実施されるので、わたしが入るのは一席だけ。
・世の中がちょっぴり落ち着いている
・ワクチンの接種が進んでいる
という社会の状況に加えて、炉開きのタイミングということもあって、急遽この時期に開催することになった。
わたしにとってはたった一席でも、先生は社中のみんなにそれぞれの役割の指導をして、懐石弁当やお菓子の選定、着物選びなんかをしているからとても忙しそう。
そんなわけで、先週と今週は2週連続であんまんが昼ごはんの席に並んだ。(他にもおうどんとかもずく酢なんかもつけてくれていて、相変わらず豪華な食卓)
先生は中華まんが好きで、寒くなってくるとよく中華まんをメニューのひとつに加えてくれる。がしかし、あんまんは手強い。
わたしのお稽古はだいたい10時から始まるか13時から始まるかのどちらかなんだけれども、皆さんご存知のようにお茶の席には必ずお菓子が出てくる。
お茶には大きく二種類ある。抹茶専門店とかで「抹茶」といって出されるのは、だいたい薄茶。先週のお稽古の記録で書いたお干菓子は、この薄茶のときに出す。一方で、薄茶の倍量のお抹茶をあの半分くらいのお湯で練ったものを濃茶と言って、一回のお稽古で少なくともそれぞれ一回ずつは稽古をする。そして、その濃茶のときには、お干菓子ではなくて、主菓子が出される。
主菓子というのは、練り切りや饅頭のような割りとがっつりとしたお菓子のこと。まさにThe 和菓子!って感じのお菓子で、みなさんご存知のようにそのほとんどにあんこが使われている。
わたしは多分人より和菓子が好きで、それでもってあんこだって好きだ。ちなみに、あんこは絶対にこしあん派。あんぱんはこしあんしか買わないし、つぶあんは主菓子以外では認めないくらいの勢いで好きじゃない。
それはさておき。お昼にあんまんを食べ切った後に主菓子を目の前にするとちょっと身構える。
まだ口の中パサパサしているしな。あと、わたし的に今日の分のあんこはもう食べ切ったんだよな……
主菓子を菓子器から自分のお懐紙に載せて、黒文字でひとくちサイズに切りながら、そんなことを頭の中でぐるんぐるんと駆け巡らせている。
口に出すわけにもいかないから黙り込んでいると、先生はにこやかに「召し上がれ」とわたしが主菓子を食べる様子を見つめてくださるし、主菓子は綺麗な装いで「さぁわたしを食べるのよ」と言わんばかりにお懐紙の上で鎮座し続ける。
そんな主菓子を前にわたしはもう、戦闘態勢。
おのれ、あんこよ。これでもかというくらい登場してきて、わたしのあんこ好き具合を試しにかかってきてるのか
くらいの勢いだ。無言だけれど、わたしは主菓子に目線で話しかける。
まぁでも、黒文字で手をつけてしまったものだし食べるしかないよな、と思いながら結局口に運ぶのだ。
いざひとくち食べると、わたしの戦闘態勢はわりとあっさりと崩れる。あんまんのあんこは庶民の味、主菓子のあんこはお上品な味なんだとまじまじと思い知らされるのだ。もう、同じあんこなんて一括りにしないで違ったおいしさを楽しめば良いのか、と妙に納得してパクパク食べてしまうんだから、本当に不思議。
最後に。主菓子との無言の闘争をしているわたしに、先生が「そんなにお菓子がかわいいかしら?」とニコニコと言葉をかけてくださるのも、戦闘態勢解除の大きな役割を担っていることも付け加えておこう。
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