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たまには目的地もなく歩いてみよう、ただし決して走ってはいけない

日常の喧騒から離れ、ただ歩くことに身を委ねるひとときは、疲れ切った私たちの心と頭にとって至福の時間です。特に、一定のリズムで歩むことで、思いもよらぬアイデアがふと浮かび上がることがあります。これは、歩くことが脳に適度な刺激を与え、創造性を引き出すからにほかなりません。
 
目的も行き先も定めずに歩むことで、私たちは普段見慣れているはずの風景や人波に新たな眼差しを向けることができます。このような散策は、意外なアイデアや解決策をもたらすことがしばしばあります。例えば、会議が紛糾してしまったとき、現実逃避のつもりで外の空気を吸いに行く途中、問題を解決できそうな良いアイデアが浮かぶことがあります。
 
しかし、アイデアが湧かなくても嘆くことはありません。そもそも良いアイデアというものは都合よく登場するものではありません。とにかくまずはデスクから離れて、15分で結構です、ふらっと野外を歩いてみましょう。行き交う人々を眺めるだけで、頭の中が整理されていきます。歩くことで心が静まり、自然とリラックスできるのです。考えが整理されてくるので、それまでバラバラだったアイデアの点と点は結ばれて線になり、線と線はつながって面になり、さらに面と面は合わさって立体になっていきます。
 
新型コロナウイルスのパンデミック下で、ニュースなどで「PCR」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。この「PCR」の原理を発見してノーベル賞を受賞したマリス博士は、彼女とドライブ中にこの斬新なアイデアを思いついたというエピソードはよく知られています。これは、散歩中の出来事ではありませんが、予期しない思わぬタイミングで優れたアイデアが湧き出した好例です。
 
ただし、決して走らないでください。せっかく湧き出たアイデアが霧散してしまうことがあります。急いでデスクに戻ってきたら、その斬新なアイデアをすっかり忘れていることさえあります。一度忘れてしまったアイデアは、もうあなたのもとには戻ってこないかもしれません。
 
そのようなとき、唯一の挽回策は、もう一度同じコースを同じペースで歩くことです。アイデアが再びあなたに微笑みかけてくるかもしれません。だからこそ、たまには目的地もなく、ゆっくりと歩いてみましょう。新たな発見や気づきが、あなたを待っているかもしれません。

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