#9【営業ノウハウ】”客観的”という概念
投稿の内容として営業ノウハウのほうが多くなりがちですね。
ちなみに”営業ノウハウ”と謳いながら思想やスタンス、概念的な話が多いなあ、と感じられている方もいらっしゃると思います。
提案書の書き方とかObjection Handlingとかは、他にも書いている方はたくさんいらっしゃいますし、そもそも基礎的な技術の話であり、ベスト・プラクティスが既に体系化されている”ツール”にすぎないと思っていて。
営業のプロとしては、そもそも概念理解や思想やスタンスなど、その”ツール”を使いこなす当人の”素の強さ”のほうが重要だと思っているのです。
今回もそんな概念理解の解像度を上げる考え方の話をひとつ。
物事を「客観的に見る」とはどういうことか?
あらゆる局面で”客観的に”という言葉は多用されると思いますが、その概念の本質を理解されている方はどのくらいいらっしゃるでしょうか?
まず言葉そのものを素直に見れば、”客観”は”主観”の対義語。
自分を外から見た場合、つまり自身の視点や考えを徹底的に排して考えることだと言えます。
どんな立場にいる誰から見ても、ひとつの事実として同等に見え評価されるであろう見方をするということです。
でも私達は人間なので、特に対象となる事象(営業ならば商談など)に思い入れが強ければ強いほど、無意識に主観に侵食されてしまうものです。
贔屓目となる場合だけでなく、卑下してしまう場合もあるでしょう。
定性的な評価軸である場合はなおさらです。
では、どうすれば”主観”を徹底排除することができるのでしょうか。
有効なのは、「他者との比較」と「クライテリアの明確化」だと思っています。
「他者と比較する」
客観視するにあたりベンチマークは必須です。
自分が営業としてどのくらい優れているのか。
As-Isの運用で回っているのかどうか。
多くの場合、絶対評価では主観は排除し得ず、相対評価によってこそ客観的な判断ができるのは明白です。
他者との比較によって初めて、自身が(もしくは評価対象が)どのような位置にいるのかがわかってきます。
しかしみなさんが思っている通り、これだけでは足りません。
明確な評価軸がなければそもそも比較ができないからです。
「クライテリアを明確にする」
他者と比較するにあたり、具体的にどのような項目でどのような基準で評価するのか。そのクライテリアを合理的に取捨選択して明確に設定する必要があります。
この商談は設定した期限内に確実に受注できるかどうか。
お客様に潜在ニーズを気付かせるとき。
必ずしも全てのクライテリアが定量的である必要はなく、定性的な項目も含まれていて然るべきです。
※定性的な項目を含む場合は「どのような状態であればその項目を満たしていると言い切れるか」という条件を詳細に言語化しておかなければ、主観が入り込む余地を与えてしまいます。
明確なクライテリアを以て他者と比較することで、客観的な判断が可能になります。
ここまで書いていて、「当たり前のことだよな」と自分でも思います。
しかし、考え方として当たり前なことと、当たり前に実行できていることは別な話です。
「あいつよりオレのほうが営業力あるのに何故あいつのほうが評価されて出世しているんだ」とか、「なんであのお客さんは課題だらけなのに自分たちはうまく業務を回せてると思っちゃってるんだ」とか考えてしまっていませんか?
本当に徹底的に客観視してから判断できていますか?
これが実践できていないうちに小手先の営業テクニックだけ使ってみても、突き抜けた成果はなかなか出せないと思います。
どのように実践し定着させるか
重要なのはここです。
やり方は人それぞれ色々あると思いますが、ここでは私のやり方をご紹介します。
自分を評価する場合
常に自分の10年先の姿を明確にイメージしておくことが重要です。
”明確にイメージする”というのは、可能な限り詳細に、自分のポジションや出せている実績、身につけているスキル、周りからの評価などを”到達しているかしていないか”がひと目で判断できるよう条件項目を設定するという意味です。
そこから7年先、5年先、3年先、1年先、半年先、3ヶ月先、1ヶ月先、とバックキャストでその目標の姿に至る道筋を描きます。
これもただ栄光のストーリーを夢想するということではなく、設定した条件項目(評価項目)に今の自分をあてはめて、項目ごとのギャップを洗い出し、それをどのようなタイムスパンでどのようなアクションによって解消していくかの計画を詳細に策定するのです。
そこまで描いたところで、他者を同様の評価項目に当てはめて見てみます。
そうすると、あいつはこの部分が自分よりどのくらい優れているから評価されているのか、こんな能力に秀でているからこういう成果が出せているのか、というふうに解像度高く可視化されてきます。
クライテリアの設定と他者比較によって、自分を過大評価することも過小評価することもなくなり、上司や会社からの評価に不満を持つこともなくなるわけです。
※上司や会社も同様のクライテリアで評価している場合に限る。
残念ながら評価の仕方がお粗末な上司や会社もたくさんあると思うので・・
お客様に潜在課題を示唆する場合
数年、十数年、もしかしたら数十年その業務運用を突き詰めているお客様は、当然ながら職務だけでなく自身の想いや矜持を持って改善・最適化に努めています。
そこに無根拠に「あなたたちはダメダメです。課題だらけです」とだけ伝えても、当然理解はされません。
うすうす潜在的な課題があると認識しているお客様ですら、よそ者に知ったような顔でディスられたら頑なに突っぱねると思います。
なので、”最適な運用”とは何か、というのを徹底的に条件項目化し、そのクライテリアに他社事例とそのお客様の事例をあてはめて客観的に評価するのです。
私の場合は、まず初回面談時のプレゼンで徹底的に”理想像・あるべき姿”を説いて啓蒙します。
その理想像からクライテリアを設定することによって、”最適な運用”のイメージもつきやすく、納得感も増してきます。
特にお客様への提案の場合、このクライテリアにはデータによって明示可能な定量的な項目が多く含まれている方が望ましいです。
同等の条件において他社に比べて数値の高い領域と低い領域、更にそのコストや収益へのインパクトが明示されていることは、否定しようのない圧倒的な説得力を持ちます。
ここまで示して初めて、「ね? 全然できてないでしょ? だから改善しましょうよ。でないとこれだけ損しちゃいますよ」とドヤ顔で訴求することができ、お客様も納得感を以て受け入れやすくなるわけです。
まずは目の前で”何かを評価する”必要があるのでしたら、この考え方による評価を実践してみてください。
きっと視界がクリアになるはずです。
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