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映画『エリザベート1878』をみる。

5月振りのTOHOシネマズ、サービスデイ。

この後、大阪ステーションシティシネマもハシゴしていきます。「シシィ」の愛称でもお馴染み、ビッキー・クリープス扮するオーストリア皇后エリザベートは、1877年のクリスマスにめでたく40歳の誕生日を迎えた。宮殿一の美貌と謳われた彼女ですが作品冒頭から公務中に倒れ我が家へ引き戻されてしまう。それなのに、馬車を降りた瞬間元通りスタスタと歩き始めて…

中指を立てる衝撃的なポスターに始まり、ざまぁみろとばかりにカメラ目線を振り撒きつつ階段を駆け上がっていく彼女の姿に、心地良い違和感。勿論史実を土台とした作品ですが、より自由な発想で「籠の鳥を放す」ように、「王家の呪縛から解き放たれる」ようにと編み上げられたメッセージが確かにそこにありました。マリー・クロイツァーの女性ならではの視点も魅力。

フェミニズム的でもあり、ミソジニー的とも解釈できる。実権は握れずに、あくまで「象徴としてただ美しくそこにあればいい」という十字架を背負い生きたエリザベート。史実によれば坐骨神経痛やリウマチに悩まされ、また愛する息子が先立ってからはマリア・テレジアに倣い一切喪服を脱ぐことがなかったと言います。シチリアにおけるラストシーンにも繋がる伏線か。

皺やシミが増えたことがきっかけで、フェイスベールを纏ったり日傘を差すようになった。王侯に対する激しい憎悪、気に入らない人物に対する辛辣な批判、結婚への嫌悪感、宮廷での孤立、死への異常なまでの関心。一方で、自由人だった父親の気質を多分に引き継いだ。等々作品の根幹には「記号」として逸話が沢山散りばめられている。単なるデフォルメとは全く異なる。

原題『Corsage』に見えた、ダブル・ミーニング。

お得意のメタ考察で〆ます。言わずもがな「コルセット」を指すフランス語であることに疑いはない。彼女を縛り付けていたもの、その象徴。しかし、こうも考えてみるのはどうでしょうか。主に祝い事、入学式や卒業式で目にする機会の多い「コサージュ」の語源も『Corsage』なんですよね。つまりあの客船のカットは「進水式」のメタファーだったのではなかろうかと。

「本当の自分」という新しい船を手に入れ、ロープを切り、海に出ること。波が高いですから、風が強いですからどうかお戻り下さい。そう諭す人達を振り払った後、たった一人で甲板に立った。あるいは沈み行く泥舟から、命からがらなんとか逃げ仰た、やっと自由の身になれた。そう解釈することもできるかもしれない。今年観た作品中群を抜いてカッコいいラスト。必見。

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