
【毎週ショートショートnote】アメリカ製保健室
たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加します。
ポリコレ強めなので苦手な方はバックしてください。
【アメリカ製保健室】
タコ漁がさかんなA市。
市長が特色を出そうとダイバーシティ(多様性)に舵をきった。
*
数年後のある日、太郎は給食を食べすぎて腹が痛くなった。
坊主頭に脂汗を浮かべ、保健室のドアを叩いた。
「ハァイ! 私はジェーン。よろしく! じゃあ早速問診始めましょう!」
アメリカ人保健医のテンションの高さに戸惑いつつ太郎はイスに座った。
「タロー。あなたは女性ですか? 男性ですか?」
見れば分かるだろう。
「男性です」
「ホントウに? 赤色はすき?」
「好きです」
「お人形は?」
「……嫌いじゃないですけど」
「性自認は女性っと。無自覚だけど間違いないわね」
ジェーンが何やらカルテに記載していく。
「はい、どんな症状デスか?」
「給食後から腹が痛くて」
「子宮が痛む、っと」
ジェーンが書きこむ。
「妊娠の可能性は?」
何いってんだ?
「なかよしはいつ?」
何だ、それ?
その時、グルルルと腹に捩じれるような痛みを覚え「もういいですっ」と保健室を飛び出した。
ふー。トイレで全て出すと痛みはなくなった。
爽快な気持ちで男子トイレを出ると、ジェーンが般若の顔で仁王立ちしていた。
「アナタは女性デス! 女性トイレを使ってもいいのです!」
意味が分からず、泣きそうになる。
保健医は「人の目を気にしないで。あなたはあなた。ポリコレポリコレ」と叫びつづけている。
じわりと涙が浮かび、わけが分からないまま太郎は謝った。
「男子トイレ使ってごめんなさい。先生ごめんなさいごべんなざい、ヒック……ヒック……」
こうしてA市ではまた一人『まともな国際人』が生まれたのであった。
近い未来の『あるかもしれない』ウソのホントの物語。
■参考資料