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黄金の荒野を拓く@宇宙ビジョン作家人響三九楽(ヒビキサクラ)
2020年12月3日 19:45
自分から開くことで、人を開いていける 慶喜の逆襲を怖れていた西郷の前に現れたのは、勝海舟だった。勝は江戸城で大阪から逃げ帰った慶喜に呼ばれた。当初勝は、皆を置き去りにし自分だけ戦場から逃げ帰った慶喜に激怒していた。慶喜は勝に、お前しか頼れるものがいない、と頭を下げ、彼の怒りを治めた。その結果、二月に慶喜は勝にこの状況の取りまとめを頼み、自分は上野の寛永寺大慈院に引きこもり、謹慎して朝廷に従う意
2020年11月28日 22:02
信じることは、愛につながる 大阪城の慶喜は、どうにか自分が新政府の中に入り込めるよう根回しをしていた。その頃、江戸にいた西郷は、浪士達を集め江戸でテロを起こした。罪のない人達を巻き込み、強盗や殺人、暴行などの無差別テロは江戸中を震撼させた。勢いに乗った彼らは、私のいる江戸城二の丸を含め、江戸城にも火をつけた。江戸の人々は震えあがり、いつ自分のところに災難が降り注ぐかわからない恐怖に襲われた。
2020年11月21日 17:43
大きく変わる未来のために家茂様はご自分の死期が近いことを悟り、次期将軍として田安亀之助を名指した。それが家茂様からの遺言だった。私達大奥の人間も、家定様の従弟である彼を後継者にすることを強く望んだ。しかし、それは実現することはなかった。彼があまりにも幼く、わずか四歳だったからだ。もし、彼がもっと年を重ねていたら もし、家茂様が長く生きていたらもし、家茂様と和宮様にお子が生まれていた
2020年11月7日 10:56
愛されていることに、自信がありますか?家茂様は二十一歳だった。和宮様も同じ年で、そして愛する人を失った。私が家定様を失った年に近い。愛する人を失った和宮様の気持ちが、心に染みわたるほどよくわかる。そんな時、心にぽっかりとブラックホールが生まれるのだ。ブラックホールは、どこまでも深くて暗い。愛する人を失った悲しみと辛さを吸い取り、ブラックホールはどんどん肥大する。和宮様は生きる気力
2020年11月4日 18:35
今、いる場所で私ができることは何だろう?1865年、和宮様との結婚の三年後、イギリスとフランス、オランダが兵庫の開港を要請してきた。「兵庫開港が認められなければ、幕府と交渉は止め、京都御所にいる天皇と直接交渉する」これらの国は、そう脅しをかけてきた。兵庫開港拒否は、彼らに攻撃を受けるチャンスを与えると考えた幕府は、天皇に許可を得ないまま兵庫開港を決めてしまった。しかし一橋慶喜は天皇からの
2020年10月30日 16:56
私がここにいる意味は、きっときっとある和宮様の兄上に当たる孝明天皇は、攘夷派で外国からの進出を阻止しこの国を守る意思がお強い方だった。その思いから、ご自身がお決めになった妹の和宮様の婚約を破棄してまで、家茂様に嫁がせたのは、徳川幕府を倒すためではなく幕府と力を合わせ、外国から日本を守るためだった。「兄上はご自分の意見をしっかり持った方ですが、とても穏やかでやさしい方です」和宮様は、私
2020年10月23日 22:13
小我を手放した時、大我はその姿を現す和宮様は、御所風のやり方を大奥で通せるように私をコントロールしようとし、私はこれまでの大奥でのしきたりややり方を通せるよう和宮をコントロールしたかった。私達はお互いをコントロールしようとしていた。何年も後に「あの時は私達、火花バチバチですごかったわよね~!」と笑い合っていたけど、当時はそんな余裕なんてなかった。どちらも自分がマウントを取りたかった。
2020年10月22日 17:19
嫁と姑のひそやかな戦い初めて嫁となる和宮様を見た私の印象は・・・「お雛様か!!」だ。和宮様は、まるでお雛様のように絵巻物から現れたお姫様だった。雅なお顔立ちに、小さなお身体。精巧に作られた手の込んだアンティークドールのようだった。私達武家の女とは、まったくちがうイキモノ。瞬きもせず、無表情だった。家茂様も初めて顔を合わせた時、一瞬驚いていた。が、家茂様はやさしく彼女に微笑んだ。
2020年10月20日 19:12
生まれ育った環境が創るものやがて江戸城に慶福様が入ってこられた。私と家定様の養子、という形で、名前も徳川家茂に改められた。「お義母上様、家茂でございます」そう言いながら、彼は頭を下げた。息子、というけれど彼は十三歳で、私は二十二歳。息子、よりも弟、という感じだった。聡明で年齢よりも落ち着いて見えた。今後私は彼を支え徳川家を守っていくのだ、と背筋を伸ばした。家定様亡き後、私は落飾し
2020年10月16日 21:54
あなたは本物のソウルメイトです私と家定様が一緒に過ごした時間は、両手からサラサラと流れていく砂のように儚い夢のような時間だった。わずか二年足らずの結婚生活。けれどこの二年間が私を強くし、私を変えた。「もし私がこの世を去り、今度菓子職人として生まれ変わっても、私の妻でいることを。私の作った菓子を食べ、笑っていることを。いつまでもずっと私のそばにいることを」そう家定様と私は約束をした
2020年10月8日 17:47
神様が用意した束の間のドルチェヴィータあれ以来、私と家定様の距離は縮まっていった。家定様は少しずつ、私に笑顔を見せてくれるようになった。阿呆を装った家定様は実はスィーツ男子で、趣味はお菓子作りだった。ある日、自分専用のキッチンに私を呼んでくれた。ドキドキして行った私の目の前にホカホカ湯気の立つ、黄色くて四角いものが出された。甘くていい匂いがキッチンの中に漂っていた。生まれて初めて見たお菓
2020年10月6日 18:34
私達は、運命という龍に選ばれここに来たその夜、私は寝所でふかふかの絹の布団に正座し、家定様を待った。胸のドキドキ鳴る音が聞こえそうなほど、緊張していた。部屋に入ってきた家定様はいつものように無表情だった。家定様も私と同じように布団に座ったが私と目を合わせない。それでも私は思い切って口を開いた。「今日、お母さまの本寿院様にご挨拶してまいりました」「ふん」家定様は、あごを上げ見下ろすように私
2020年10月3日 17:31
「あきらめ」を明らかに改めたい眠れないまま朝を迎えた。布団にじっとこもったまま横を見ると、起き上がり手を伸ばせば届く距離に、家定様はいる。が身体はそこにあっても、心は何億光年も離れている。天を衝くほどに高い木々に囲まれ、道もない大きく深い森の中でたった一人取り残されたような、とてつもない寂しさが私を襲う。これから私はどれだけの夜を、この大奥で過ごさなければならないのだろう?なんの希望も
2020年10月2日 16:24
眠れない初夜お式は緊張の内に終わった。家定様はお式の時に一度も私と顔を合せなかった。ずっと前を向き、視線をそらせていた。嫌われているかと思ったが、それはあとで違うことがわかった。けれどいっそ嫌われている方がましだったのかもしれない、と後で思い知った。家定様は私に何の興味もなかった。ただ御台所の地位が空いており、家臣や生母の本寿院様達にせっつかれ仕方なく私を迎えたようだ。チラッ、と見