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言葉

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記事一覧

テイクとメイク

テイクとメイク

写真を学んでいた頃、写真にはtakeとmakeがあると教えてもらった。
外に出て自然や街のありさまや人々のスナップ(当時は今ほど厳しくなかった)を撮るのがtake、スタジオでイメージを作り上げていくような撮影がmakeの写真だ。

私は撮るのも見るのも断然takeの写真が好きだ。
その時そこにしか表れないものを探して歩き回るのは楽しかったし、そんな瞬間に立ち会えた時は感動する。
なにより、原因と結

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日常の中の魔法

日常の中の魔法

言葉は魔法だ。
たったの一言で人生まるごと変わることもある。
言葉は当たり前の道具として日常にありふれているので、それが魔法であることを忘れてしまっている。

芸術も魔法だ。
誰かの人生を翻弄し、作品の中に巻き込む力がある。
写真という芸術も、今では誰もが日常的に使っているので、それが芸術足り得ることを忘れがちだ。

私は言葉と写真の魔法に翻弄され取り込まれ、救われ人生を変えられた。
とても素晴ら

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青写真

青写真

私はゼロから生み出す創作ができない。
だから、そこにあるものそのままを写し取る。

イラストや絵画を描くのではなく写真を撮っていたのも、何もない真っ白なキャンバスを与えられると何をしたらいいのか分からなくなるからだ。

物語を書く時も全く同じだ。
ファンタジーみたいに全く新しい世界を作り出すなんて私にはできない。
だから、自分に起きたことをそのまま書き留める。

今この瞬間も、いつか物語になる。

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物語の作り方

物語を作っている。
でも、頭で物語を考えているのではない。

自分の人生の中に物語を引き起こし、
そしてそれを写し取るのだ。

あるとき面白い出来事に遭遇し、
それを書き留めたことからそれは始まった。

いつしか、これは面白い展開になりそうだという筋書きを自ら選択して生きるようになった。

とは言っても、だいたいその通りには行かない。
だけど、いつも最後はこちらで考えた脚本よりも数倍エキサイティン

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世界は暗号に溢れている

いまこの瞬間も私達の周囲では、目には見えないけれど誰かに宛てたメッセージが電波や信号に乗って飛び交っている。

でも、それだけじゃなくて、普段私達が目にしたり耳にしたりするオープンなものの中に、特定の誰かにだけ解読できる暗号が仕込まれている事がある。

例えばコンビニでたまたま聞こえてきた曲や、ふと目を留めたポスターのイラスト、お気に入りの小説やテレビドラマや映画、あらゆる芸術は暗号じかけだったり

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水平線

パソコンのスクリーンセーバーにくるくると文字が踊っている。

「何なら出来ますか?
どうしたら出来ますか?」

解決志向というこの考え方は役に立つから、困った時は「何が出来るのか」に集中するといいよ。
この部屋の主はそう教えてくれた。

彼はカウンセリングやコーチングといった類の勉強をしている。

「働く事は怖いけど、もう逃げたくないんだ…」

私はうつ伏せで枕に顔を埋めながら絞り出すように声を出

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書く理由

どうして書いているのだろう。
もちろん書きたいから書いているのだけど、そもそもなぜ書きたいと思ったのだろう。

私にとって書くことは手紙やプレゼントと同じで、具体的な宛先のあるとても個人的なものがほとんどだ。
書く動機は「返事」「お礼」などのお返しであることが多い。

だったらわざわざこんな所に書かずに直接伝えればいいじゃないかと思うのだけど、それでは伝わらない何かを乗せるためにはこうするしかない

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禁煙

聞かれると説明が面倒なので禁煙したと言っているけど、やめたつもりは全然ない。

今は最高に美味しい一本を吸うための準備中なのだ。

ある日食後に煙草を切らして吸えなかった。
食後の一本が至福の時なのに失態だ。
当分買えそうにもないし吸える場所もない。

悔しいから夕食は好物の惣菜を買って、昼の分まで煙草を堪能してやる。
惣菜を皿に移し夕食の準備をしている間、好物からの煙草、という流れを考えるだけで

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