不正解の山

ボールペンのインクが切れた。
消しゴムが真ん中からボキッと折れた。
筆ペンから墨が溢れ出した。

カスカスのインクでは、書きたいものも上手くは書けない。
ボロボロの消しゴムでは要らない言葉を綺麗に消せない。
溢れ出した墨は、真っ白な紙を真っ黒に染めて何もかもを塗りつぶした。

手の側面で擦って滲んだ文字は綺麗に書けたひらがなだった。書いてはやめて、書いてはやめての繰り返し。くしゃくしゃになった紙だけが積もり積もって山を作る。
完成したと言えるものはたった一枚しかないというのに。

そのやっと完成した一枚さえ、なんだか気に入らないもののように思えて、後ろの山の仲間に追加したくなる。いつもこうだ、いつも。

ぐるぐると悩ましい時間を過ごしながら、壊れた文房具で無理くりにかき進める。
苦労して上り詰めたその先に何もなくても、何かを求めずにはいられない。きっと望んだ景色じゃなかったとしても。

この歩みは止められない。

墨で汚れた指先で、なんとなくなぞってみた輪郭
それが思いの外好きな形で。
ああ、これでいいのか、これでいいのだ。
なんとなくそう思えた。