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漫画の感想

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【隙自語】「私だけを守ってくれる殺人鬼」の良さがまったくわからない自分が、好きな男キャラについて話します。

 ↑の話に関連した自分語り。

 盛龍も女性向けに出てくればモテていたのか……。

「ブルーヘヴン」の記事で書いたが、盛龍のような「私だけを守ってくれる殺人鬼」は、自分にとっては「自分」(しかも自分でも「駄目だな」と思う部分)なので「相手役」としてはまったく想定できない。

 ちなみに「社会のことがよくわからなくて殺人鬼になってしまうタイプ」には感情移入するが、

「社会にコミットしていて、社会規

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男同士で恋愛感情を含まないBルートを見たいなら、「特攻の島」3巻を読んで欲しい(むしろ全巻読んで欲しい)

男同士で恋愛感情を含まないBルートを見たいなら、「特攻の島」3巻を読んで欲しい(むしろ全巻読んで欲しい)

↑の記事の続き。「Bルートって何?」と思った人は、上の記事を読んでもらえると嬉しい。
 平たく言うと、「相手を理解することで自分を理解するルート」のうち、「女性向け恋愛モノ」の底に眠る価値観から生じたルートのこと。

「特攻の島」は素晴らしい漫画だが、特に関口の回天戦は作内屈指の名場面なので未読の人はぜひぜひ読んで欲しい。

※以下、3巻のネタバレ注意。

 物語の筋を整理すると、主人公の渡辺と親

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「男向けバトルモノ」と「女性向け恋愛モノ」を分けるのは「その人の魂とは何なのか」という価値観である。

「男向けバトルモノ」と「女性向け恋愛モノ」を分けるのは「その人の魂とは何なのか」という価値観である。

↑の記事の続き。

 以前にも書いたが、「男向けバトル漫画」と「女性向け恋愛漫画」は、方法と過程が違うだけで同じことを目的としている(と思う)

 男向けの場合、同性である男とバトルすることで相手を理解し、己(の世界の立ち位置)を知る。
 自己認識、自己探求、自己承認、自己実現を同性を基準(相手)にして(理解して)その比較によって達成するのが男向けの漫画だ。
 端的に言えば、「自分がこの世界でどれ

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【「デデデデ」キャラ語り】なぜ、小比類巻は「お前の中の正義はお前の中でしか成立しない」と言うのか。

【「デデデデ」キャラ語り】なぜ、小比類巻は「お前の中の正義はお前の中でしか成立しない」と言うのか。

 何年かにいっぺんくらい、好き嫌い以前に「他人とは思えないキャラ」に遭遇する。
 久しぶりに出会った「他人とは思えないキャラ」が「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション(デデデデ)」の小比類巻である。

 作内で小比類巻がやっていること言っていること(具体的な言動)には賛同できない。

「俺は俺に都合がいい情報だけを信じる(突き詰めれば、最終的には誰でもそうしている)」
 その通りかもしれ

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「少年漫画を読む女性は多いのに、少女漫画を読む男性が少ない」のは、少女漫画が面白くないからではない。

「少年漫画を読む女性は多いのに、少女漫画を読む男性が少ない」のは、少女漫画が面白くないからではない。

※個人差はおいた、「属性としての男女」を対象にした話です。

「少女漫画でなぜ『推しの子』が生まれなかったのか」という増田が話題になっていた。
 その増田自体は各所からツッコミを受けていたのでいいのだが、そこから派生した話について語りたい。

◆【推しの子】が少女漫画で生まれなかった理由は、考えればすぐにわかる。

「【推しの子】がなぜ少女漫画で生まれなかったのか」
 答えは簡単だ。
【推しの子】

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もう少しで2024年も終わるので、今年を振り返ってみたい。

もう少しで2024年も終わるので、今年を振り返ってみたい。

 2024年もあと10日ほどなので、今年を振り返りたい。

◆2024年、心に残ったコンテンツ

 総合の一位は「エルデンリングDLC・Shadow of the Erdtree」
 世界観とストーリーは本編よりも好き。
 本編も滅茶苦茶面白いのに、DLCも独立した一作品として面白い。フロムはほんと凄い。

 次回作『ELDEN RING NIGHTREIGN』はディレクターが宮崎さんじゃないのか

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【アニメ感想】「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」 終盤以外は文句なし。滅茶苦茶面白かった。

【アニメ感想】「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」 終盤以外は文句なし。滅茶苦茶面白かった。

 アニメ「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」全18話を観た。

 ラスト手前までは滅茶苦茶面白かった。
 災害やコロナなど非日常的な脅威が可視化される中でどうやって日常を生きるか。その中で日常を生きる人、自分の正しさに生きる人、情報に振り回される人、何を重視するか、どう考えるかの違いによって脅威がまだ来ていない段階で社会は分断されていく。
 その様子を淡々と描写しているところが良かっ

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「鬼滅の刃」の序盤は、なぜ面白くないのか。

「鬼滅の刃」の序盤は、なぜ面白くないのか。

※「私(俺)は最初から凄く面白かったが、それはそれとして自分とは違う感想を聞いてもいい」という人のみお読みください。

◆最初に読んだ時、二巻で読むのをやめている。

 今だから告白するが、自分は「鬼滅の刃」を初めて読んだ時、二巻までで読むのを止めている。
「つまらなくはないけれどそこまで面白くないな」と思ったのだ。
 多少なりとも「これは面白いかも」と思い出したのは柱が出てきてからだ。「えっ、凄

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物語内ではフォーカスされないが、読んでいて精神状態が心配になる登場人物がいる。

 先日、読んだ「氷の城壁」について(ネタバレが含まれます)

 全体の感想としては「スキップとローファー」に似ている。志摩と湊は驚くくらいよく似ている。
「自分は空っぽ」と感じるキャラを充足させるために存在する無価値感ルートの話がどういう傾向を持ちやすいかは色々書いたので割愛。

 この話でライバルキャラとして登場している栗木桃香のことが気になったので、その話をしたい。

 前提として、例えばモデ

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欲望に名前をつけてしまうのはもったいない。

※15歳未満は閲覧禁止だぞ(いるのかな)

 引き続き「鼻下長紳士回顧録」の話。
 ↓の台詞を読んで

↑の増田のことを思い出した。

「その欲望を持つ人間が多い→概念を共有することを多くの人間が必要としている→概念を規定する名称がつく」
なので、「名づける(名称がある)時点で、その欲望は普通である」というのはわかる。

 ↑の増田のように、自分の持つものに名前を与えられたことで「自分を少しだけ理

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「愛されなければ生きていけない」という無力感と恐怖はどこから来るのか。

「愛されなければ生きていけない」という無力感と恐怖はどこから来るのか。

 安野モヨコの「鼻下長紳士回顧録」上下巻を読んだ。

「無能を装って(もしくは本当にそうなることで)他人の関心(憐れみ?)を引き、一方的に受け入れられ、愛され、何でもしてもらう」
 それがいいか悪いか以前に、なぜそんなことをするかがよくわからなかった。
 無能力な対象は赤ん坊のように一方的に愛されるかもしれないが、大人になってその方法を生存戦略として選ぶのはかなりリスキーだ。
 自分の生死が相手次

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【推しの子】と同じ「個人の内部に生成された因果律(運命の輪)に、周りが巻き込まれる話」について語りたい。

【推しの子】と同じ「個人の内部に生成された因果律(運命の輪)に、周りが巻き込まれる話」について語りたい。

※前提として、自分は【推しの子】を「吾郎の罪悪感によって形成されている因果律(運命)によって生成された話」と考えている。
 詳しくは下記参照↓

「個人の内部の因果律(運命の輪)に周りが巻き込まれる話」とは何か。
 ある特定の人物(主人公が多い)の内部にある問題が解決するまでは、「その問題が生み出す因果律」によって同じことが運命として何度も繰り返される話である。
 別の言い方をすると、「逃げ出して

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庵野秀明による「安野モヨコ作品への批評」が的確すぎる。

庵野秀明による「安野モヨコ作品への批評」が的確すぎる。

「後ハッピーマニア」を5巻まで読んで、「監督不行届」に掲載された庵野秀明のインタビューの中の「安野モヨコ作品への批評」を思い出した。

「後ハッピーマニア」を読んで、自分もこの作品の「現実に対処して他人の中に生きているところ」が好きで凄いと思っているんだ、と気付いた。

 状況(現実)をどう考えどう反応をするか、その反応によって相手がどう反応してどう状況が変化するか、その状況にまた自分が置かれてど

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「【推しの子】をどう読んだか」をもう一度整理しながら、この物語のどこが好きかを語りたい。

「【推しの子】をどう読んだか」をもう一度整理しながら、この物語のどこが好きかを語りたい。

 ↑で「自分が【推しの子】をどう読んだか」を書いたが、もう少し整理しておきたい。

◆【推しの子】は「ご都合主義の物語」である。

 最初に【推しの子】を読んだ時から、これは「吾郎が必要としたから存在する、吾郎の内面世界に強烈にリンクしたストーリーだろう」と感じていた。

 作内現実が吾郎の妄想でてきている、というわけではなく、「読み手である自分たちが観測しているストーリーは、吾郎が必要としている

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