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靖國神社および靖国問題、戦没者追悼そして戦争の時代

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知られざる「A級戦犯」合祀への道───朝日新聞記事から浮かび上がる7つの真実(月刊「正論」平成18年12月号)

知られざる「A級戦犯」合祀への道───朝日新聞記事から浮かび上がる7つの真実(月刊「正論」平成18年12月号)

1、戦犯が戦没者と認められていった経緯

 靖国神社の本殿には外界の喧噪とは隔絶した静寂があり、神気がみなぎっています。ここに神、いませり、と信じ、「国安かれ」と日本国民が日々、捧げてきた祈りの重みでしょうか。それとも、国家存亡の時にかけがえのない命を国に捧げた戦没者を、私を去って公に殉ずる精神を、神として祀ってきた歴史の重みでしょうか。

 殉国者を国家が慰霊・追悼するのは当然の責務であり、慰霊

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「靖国参拝しない」と表明した野田佳彦新首相の論理破綻──「国際政治などを総合判断」ではなく「党内政治に配慮」か? 野党時代は小泉参拝の不甲斐なさを批判する「質問主意書」を提出したのに(2011年9月4日)

「靖国参拝しない」と表明した野田佳彦新首相の論理破綻──「国際政治などを総合判断」ではなく「党内政治に配慮」か? 野党時代は小泉参拝の不甲斐なさを批判する「質問主意書」を提出したのに(2011年9月4日)

(画像は靖国神社の招魂斎庭)

野田佳彦内閣が発足しました。野田首相は「在任中、靖国神社を参拝しない」と表明しました。

 野田首相は6年前の平成17年10月、靖国神社に社頭参拝した小泉純一郎首相に対して、「戦犯」についての認識などについて、質問主意書を提出しています。それは靖国参拝を批判するのではなく、不甲斐ない小泉参拝の尻を叩く内容でした。

 質問主意書は、その前文で、小泉首相は「A級戦犯」

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ためにする鳩山代表の追悼施設設置発言──戦没者をどのように慰霊・追悼すべきなのか(2009年08月23日)

ためにする鳩山代表の追悼施設設置発言──戦没者をどのように慰霊・追悼すべきなのか(2009年08月23日)

 民主党の鳩山由紀夫代表が、靖国神社に代わる国立の戦没者追悼施設設置に取り組むことを表明しています。

「特定の宗教によらない、どなたもわだかまりがなく戦没者の追悼ができるような国立追悼施設の取り組みを進めたい」
「天皇陛下も靖国神社には参拝されない。大変つらい思いでおられるんじゃないか。陛下が心安らかにお参りに行かれるような施設が好ましいと思うのも理由の一つだ」
と述べ、候補地として千鳥ヶ淵墓苑

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天皇に私なし──昭和天皇が靖国参拝をお止めになった理由?(2007年10月23日)

天皇に私なし──昭和天皇が靖国参拝をお止めになった理由?(2007年10月23日)

▼1 最後の参拝から富田メモまで、10年間のタイムラグ

 10月17日から20日にかけて、靖国神社で秋の例大祭が行なわれました。前月の自民党総裁選中、「相手(中国など)の嫌がることをあえてする必要はない」と語っていた福田康夫首相は、やはり参拝しませんでした。
http://www.yasukuni.or.jp/index2.html

 不参拝といえば、昭和天皇は同神社の「A級戦犯」合祀を不

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キリスト教化する公的追悼行事。キャンドルともし、犠牲者慰霊。長岡市の広場で追悼式典。中越地震3年、新潟──「時事ドットコム」10月23日(平成19年10月25日)

キリスト教化する公的追悼行事。キャンドルともし、犠牲者慰霊。長岡市の広場で追悼式典。中越地震3年、新潟──「時事ドットコム」10月23日(平成19年10月25日)

(画像は中越地震20年の追悼式。時事通信記事から拝借しました。https://www.jiji.com/jc/article?k=2024102300658&g=soc

時事通信によると、大きな被害をもたらした中越地震から3年を迎えた一昨日、新潟県が主催する追悼式典「追悼と復興への誓い」が長岡市の広場を会場に開かれたのですが、その儀礼はステージに犠牲者と同じ数のキャンドルが並べられ、関係者が点

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福田首相が自衛隊追悼式に出席──「日経ネット」平成19年10月27日の記事を読む

福田首相が自衛隊追悼式に出席──「日経ネット」平成19年10月27日の記事を読む

(画像は防衛省メモリアルゾーン。同省HPから拝借しました。ありがとうございます)

 殉職自衛官の追悼式に出席した首相は「尊い犠牲を無にすることなく」と挨拶した、と「日経ネット」の記事は伝えています。

 市ヶ谷の防衛省内にあるメモリアルゾーン(慰霊碑地区)は戦時に命を落とした戦死者ではなく、殉職者の追悼施設です。自衛隊が参戦したことはないのですから、いわずもがなです。

 犠牲者を悼むことはもち

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靖国神社「遊就館」見学を止める宝塚市──「侵略戦争を美化」と共産党市議に批判されて(2013年7月14日)

靖国神社「遊就館」見学を止める宝塚市──「侵略戦争を美化」と共産党市議に批判されて(2013年7月14日)

(画像は竣工当時の遊就館。靖国神社HPから拝借しました。ありがとうございます)

「政教関係を正す会」から「はがき通信」が届きました。

 テーマは、(平成25年)5月末に宝塚市議会で共産党議員が、市内中学校が修学旅行で「過去の侵略戦争を美化している」靖国神社の遊就館を見学していることについて問いただし、結局、「今後は利用しない」と同市学校教育部長が答弁、「屈服」したというものです。

「はがき通

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「反日」江沢民に勝利した胡錦涛の靖国批判──友好ムードを演出しつつ、首相参拝に釘を刺す(「神社新報」平成19年1月23日号)

「反日」江沢民に勝利した胡錦涛の靖国批判──友好ムードを演出しつつ、首相参拝に釘を刺す(「神社新報」平成19年1月23日号)

 日本の将棋と中国の将棋(シャンチー)にはいくつかの際立った違いがあります。たとえば日本では相手から奪い取った駒を自分の駒として再利用できますが、中国にはこの「持ち駒」のルールはありません。取った駒は捨てられるだけ、活かして使うという発想はありません。

 ところが面白いことに中国の権力中枢では、相手の得意技を持ち駒にして切り返し、逆に相手を攻め立てるという丁々発止の政治闘争がしばしば見受けられま

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小泉首相の靖國神社参拝と中国──江沢民から胡錦涛へ。明日への予兆(「神社新報」平成15年10月6、13、20、27日号連載)

小泉首相の靖國神社参拝と中国──江沢民から胡錦涛へ。明日への予兆(「神社新報」平成15年10月6、13、20、27日号連載)

 日中関係は近年、とりわけ江沢民前政権時代に、歴史問題をめぐって冷え切った。小泉首相の靖國神社参拝に対する中国政府の批判はなほ厳しいものがあるが、中国問題の専門家たちは今年(平成15年)3月、政権を譲り受けた胡錦濤国家主席の誕生以来、両国関係に変化の兆しを読む。胡主席は「抗日戦争」を知らない第4世代の指導者。首相参拝定着、引いては国家護持を願ふならば、新政権の新たな動きに注目せずにはゐられない。

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靖国神社──A級戦犯分祀が『あり得ない』理由(「選択」2005年2月号)

靖国神社──A級戦犯分祀が『あり得ない』理由(「選択」2005年2月号)

 平成16年12月9日、山崎拓首相補佐官が東京・九段の靖国神社をたずね、新任の南部利昭宮司ら幹部神職と面会し、

「神社にまつられている東条英機元首相らA級戦犯十四人を『分祀(ぶんし)』できないか」

 と打診しました。新聞報道によると、首相の名代としてではなく、中曽根康弘元首相の意を受けての働きかけでした。神社側は「拒否」したと伝えられています。

 打診は同じ年の3月にもありました。自民党の島

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海上自衛隊が韓国・顕忠院を表敬──一方通行の「親善」(平成19年9月16日日曜日)

海上自衛隊が韓国・顕忠院を表敬──一方通行の「親善」(平成19年9月16日日曜日)

(画像は顕忠院を表敬した海上自衛隊@中央日報)

 韓国の中央日報によると、日本の海上自衛隊の将校たち200人が、韓国海軍との共同訓練に先立って、ソウルの国立墓地顕忠院を表敬しました。中央日報は参詣の模様を写真入りで伝えています。

 さて、小泉首相の靖国神社参拝をめぐり、激しい批判がわき上がったのは5年前(平成14年)の夏のことでした。首相は「わだかまりなく追悼の誠を捧げるために議論する必要があ

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ひめゆり部隊はなぜ合祀されたのか──悲劇を理解するからこそ(平成19年9月23日日曜日)

ひめゆり部隊はなぜ合祀されたのか──悲劇を理解するからこそ(平成19年9月23日日曜日)

◇1 首相参拝訴訟に代わる標的

 いままさに首相の座に駆け上ろうとしている福田元官房長官は、自民党総裁選に先立って、

「相手(中国など)の嫌がることをあえてする必要はない。配慮しなければならない」

 と首相としての靖国参拝見送りを明言したと伝えられますが、司法の世界ではここ数年、反ヤスクニ派が全国展開した小泉参拝訴訟の最高裁判決が今春までに出揃い、すべて違憲性が否定されています。法的には首相

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大江健三郎氏『軍命令説は正当』と主張──沖縄「集団自決」訴訟で(平成19年11月10日土曜日)

大江健三郎氏『軍命令説は正当』と主張──沖縄「集団自決」訴訟で(平成19年11月10日土曜日)

 昨日のMNS産経ニュース〈http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/071109/trl0711092144016-n1.htm〉によると、沖縄戦で旧日本軍が住民に集団自決を命じたとする本の記述は誤りであるとして、当時の守備隊長らが、ノーベル賞作家の大江健三郎氏と岩波書店に損害賠償や書物の出版・販売差し止めなどを求めた訴訟で、出廷した大江氏は、

「参考資料を

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アメリカが見た鏡のなかの「軍国主義」──涙骨賞落選論文「天皇とは何だったのか」7(2019年8月10日)

アメリカが見た鏡のなかの「軍国主義」──涙骨賞落選論文「天皇とは何だったのか」7(2019年8月10日)

 近代化の道をひた走った末に、日本はほとんど世界を相手に戦争し、ポツダム宣言を受け取れ、敗戦国となった。尊い人命が数多く失われ、国土は焦土と化した。宣言の受諾を国民に伝える詔書には「五内爲ニ裂ク」と無念が表明されている。

 日本に降伏を迫るポツダム宣言には、「軍国主義」「世界征服」の言葉が登場する。

「われらは、無責任なる軍国主義が世界より駆逐せらるるに至るまでは、平和、安全および正義の新秩序

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