#詩
神へ捧げるソネット 抄6 #48
佐佐木 政治 1992年1月 かおす 68より
所有がひとしきり問われるこの無縁の庭に ぼくらは佇つ
あなたへ問いかける由来もない 断絶の彼方からやってきて
どんな契りや絆が 結べるというのだろう いや
ひょっとしてぼくらの存在は いつも手詰りなあなたの碁盤の石かもしれない
神へ捧げるソネット 抄6 #47
佐佐木 政治 1992年1月 かおす 68より
神よ もちろんあなたにも たったひとつの面輪がなくてはなるまい
あなたがこの世に存在する すべてのものに分ち与えた意味が
そのために失われて問われている 抽象の城へとむらがる
すべてに意味を与えたばかりの非在の証となって
神へ捧げるソネット 抄6 #52
佐佐木 政治 1992年1月 かおす 68より
ぼくらの存在は 奇蹟というよりも むしろ危険というにふさわしい
あらゆる可能性を閉ざしながら 絞り出されてくる 一筋の道は
裏打されないもののたえがたい 不安に問われながら
無縁の契機の 粉雪にさらされている
ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#76
佐佐木 政治
神の恩恵に浴するものたちよ
かれらにとってひもじさや寒さは身の不運とはならない
かれらの翼やたて髪の中に 過去や未来の影が行き交うことはない
思い出や夢を封ずる袋を持たない
なんという狂気 あなたの枝枝は、そのままかれらをなぞる
一瞬の光となって 栄誉の重みにはじけるのだ
そして人間だけが帰ってくる
あなたの栄誉を蹴って 意識の海が立ち騒ぐ渚へと
過去や未来が忽然と浮上する