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ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#73

佐佐木 政治

血は静かに皮袋の中に納まっている 
心臓に始まり心臓に果てる血は
われわれの体のページを巡る 
円環軸通は永遠への擬体

言葉ミュトスの巣をかけるのだ 
巡る血から言葉の霧が立ちのぼる
ほのかな体温を掲げ 岬や湾に灯が揺れる 
摂氏36℃の灯のげんにはいつも
冷たい月がかかっている

火は火をたしかめる 
重ねられる手と手の間隙かんげきを走る 閃光の記憶が蘇るのだ
体温計の目盛に浮上するふるさと
彼の像の光背が 今もふるえている



父・佐佐木政治
昭和6年長野県飯田市に生まれる。飯田高松高校卒業後、大学で仏文学を学ぶことを断念、木曽にて印刷業を営む。生涯、詩を詠み、本を作る。亡くなる二年前に脳梗塞で麻痺や認識障害を患うものの、動かない手を駆使して最後の詩集「神へ捧げるソネット」を手作りした。


>>>>>>>>>いつもフォトギャラリーから素敵な写真を使用させていただいています。感謝してます。ありがとうございます。<<<<<<<<


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彩美 saimi
亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。