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水族館の青に溶ける
水槽の向こう側に、果てのない青が広がっている。
光がゆらめき、波のない海のように静かで、優しくすべてを包み込む。
ガラスの向こうを漂う魚たちは、まるで時間の外にいるようで、
私の知らない世界を優雅に泳いでいた。
この水槽の中はどこまでも広いのに、
私の足元には波ひとつない。
息苦しさも、深い闇も、どこにもない。
それなのに、なぜか指先が冷たい気がして、
私はそっと手を伸ばした。
水槽のガラスに、光がゆるやかに揺らぎ、
その向こうに、まるで異世界の扉が開くような気がした。
私はここにいてもいいんだろうか。
この青の中に溶けてしまっても、いいんだろうか。
水の音が聞こえる。
それは波の音ではなく、ただ静かに満ちてゆく音。
やがて、心の奥底まで透き通るように、
私はこの世界に溶けていく。
あとがき
あなたは、どこへ溶けていったのでしょうか。
静寂の中で息をつける場所へ?
手の届かない夢の世界へ?
それとも、光の揺らめく青の果てへ?
水はすべてを映しながらも、何ひとつ形をとどめない。
だからこそ、この詩も、あなたの心の中で
好きな色に滲んでくれたなら、それだけでいいのです。
「世界に溶けていく」という言葉をどうしても使いたかった詩。
水族館の神秘的な空間は美しくていいね。
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